貴方だけに向ける特別な笑顔


連日のエイリア学園との試合で、円堂は少し疲れているようだった。シャツを捲くりあげ汗を拭く円堂は正直目の毒だが、意味は違えど周りも見惚れているらしい。汗がきらきらと光って、正直格好いいし可愛い。円堂をじっと見ていたらしい音無がタオルを落として、同じ様に見ていた豪炎寺が飛んできたボールにぶつかった。「守抱いて!」というあのグランだか知らないが、奴の声まですぐそばの茂みで聞こえた気がしたが空耳だろう。茂みががさがさ動いてるけどきっと木の精、いや気のせいだ。

「アツヤ君」
声をかけられ振り向く。雷門がドリンクを持って立っていた。
「これ、はい。」
ドリンクを受け取る。雷門はしばらく円堂の方を見ていたが、不意にこちらを向いた。
「…アツヤ君、円堂さんのこと好きなんでしょう」
ぶはっ、ドリンクが思わず口から漏れた。ごほごほ咳込み、涙目になりながら雷門を睨む。雷門は小さく笑っていた。
「やっぱり」
そう言うと雷門は円堂のもとに歩み寄り、何かしら耳打ちをした。まさか今のことを言ったのだろうか、させるものかと駆け寄ろうとした瞬間、円堂がこちらを向いた。
「…アツヤ」
円堂が俺の目を見て言う。心臓の奥の方がきゅっとして、鼓動が速くなる。雷門の奴!せめて告白は、自分でしたかったのに、
「夏美が言ってたけど咳込んだって大丈夫か?風邪?」
最近調子悪いなー、と円堂が言う。は?咳込んだ…?雷門の方をバッと見る。雷門はクスクス笑っていた。
か、からかわれた…!
「大丈夫だ」
あの咳込みも雷門のせいだ。雷門を再び睨むと素知らぬ顔をしていた。
「お前こそ大丈夫かよ。最近疲れてんじゃないのか?」
話題を変えようと小さくつぶやく。と、円堂は一瞬驚いた顔をした。
「俺そんな疲れてるように見える?」
「や、何となく。」
「そっか」
円堂はそう言ってにこりと微笑んだ。初めて見る、柔らかい雰囲気の、とても可愛い笑顔だった。
「ありがとう」
また微笑んだ円堂に、何も言えなくなった。



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