そりゃまあ、サッカーが一番とはいえ俺だって男だし。周りが彼女の話とかしていると、ほんの少しばかり羨ましくなってしまう。だから、女の子に呼び出されて、少し期待していたのだ。
「これ、吹雪君に渡して下さい!」
生まれて初めて「ぎゃふん」と言った。
「ああキャプテン、どうし「おらっ!」
ビタンッ
昼休憩。吹雪のクラスに入り、にこやかに挨拶してきた吹雪の顔に手紙を投げつけた。吹雪は何が何だか分からないという顔をしている。
「いたた…なにこれ」
「手紙」
そこで漸く頭が冷えてきて、冷静になることが出来た。よく考えたら吹雪は何も悪くない。ごめん。でも口には出してやらない。
「…キャプテンから?」
「んな訳あるかっ」
そう言うと、吹雪は小さく溜め息をついて手紙を鞄に押し込んだ。それから弁当箱を持ち席を立つ。
「一緒にお昼食べようよ」
ああ、と返事をすると数人の女子が吹雪の方をちらりと見た。まあそりゃ、サッカー上手いイケメンはモテるだろう。
「吹雪って誰かと付き合わねーの?」
屋上のドアを開けながら言うと、吹雪は苦い顔をして俺を見た。
「…予定はないよ」
そんなにモテるのに勿体ない、と言ったが今度は無視されてしまった。どうやら機嫌が悪いらしい。しょうがないので弁当を広げ、卵焼きを口に入れる。砂糖の入った甘い卵焼きは俺の家独特の味だ。横から伸びてきた吹雪の手を叩いて睨むと、吹雪は先程より機嫌良さそうに笑った。
「僕はもう好きな人いるから」
どうやら話の返事らしい。遅い、と言うと吹雪はまたにこにこ笑った。
「どんな子なんだよ」
キャプテンには教える義務がある、と法螺をふくと吹雪は少し考えるような仕種を見せた後目を細めた。
「すごい子だよ」
吹雪はあえて何が、とは言わなかった。またその吹雪の目が嬉しそうで、本当に好きだということは分かった。
「デートとかした?」
そう聞くと、吹雪は首を振って「皆と一緒なら出かけたことは沢山あるけど」と笑った。
その後にやりと笑った吹雪を見て、何だか、とても、