「円堂君」
最近照美がよく遊びに来てくれる。何でだか知らないけど、どんなに疲れてても照美に会ったら全部吹っ飛ぶ。部活帰りによく会って買い食いをしたりしながら話すのだけれど、照美はいつも優しい。にこにこ笑って俺の話を聞いてくれる。
「それ美味しい?」
俺の食べてるコロッケを指して照美が言う。近所でも評判の肉屋さんで売っているジャガ芋のコロッケだ。
「美味いよ。食べたことないの?」
照美は恥ずかしそうに頷いた。それからもう一度コロッケを見る。
「ないなあ」
そっかぁ、と言ってまたコロッケを口に含む。うん美味しい。
「食べかけでよかったら食うか?」
そう言って照美の方にコロッケを差し出すと、照美は少し躊躇った後コロッケを一口食べた。小さな一口だった。
「…おいしい」
照美が顔を輝かせる。もう一口いるか、と言うと照美は顔を赤くして慌てた様に首を振った。照美は上品で遠慮しいだ。別にいいのに。壁山とか半分以上食うぞ、成長期だなあ。
「円堂君には色々なこと教えられてばっかりだ」
照美がくすくす笑う。よく意味は分からなかったが、感謝されている様なのでそれは嬉しい。
「そうかな」
照美は頷いた後、暫く黙って、緊張した時の様に深呼吸を繰り返した。
「円堂君」
照美の、いつもより真剣な声が聞こえる。女の子のような顔がきゅっと引き締まっていた。
「円堂君の好きなのは誰だい?」
みんな好きだぜ、と言おうとしたが口を閉じた。そのみんなと会えたのはサッカーのお蔭だから、つまり。
「サッカーしてる奴」
そう言うと照美は笑いながら小さく溜め息をついた。

「あっ!」
後日照美に会った時、照美は髪をばっさり切っていた。金色の綺麗な髪は肩にもつかない。
「どうしたんだよそれ」
そう言うと照美は苦笑いした。
「サッカーしてる人全員に嫉妬するのが恥ずかしくて、ケジメのため。」
あんなに綺麗な髪を切ったのは勿体ないけどよく似合うぜ。そう思ったまま言うと照美は顔を赤くした。


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無意識片思い円堂さんと超絶片思い照美


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