頭の中は、君一色

「う…、ん」
目を開けると、キャラバンの天井が見えた。慌てて起き上がる、と、キャラバンのドアが開いた。
「アツヤ、大丈夫か?」
心配したような顔の円堂だった。手には濡れたタオルを持っている。
「寝不足だって?夜中自主練習でもしてたのか?」
円堂が困った様に笑った。可愛い、というより格好いいといったような笑顔だ。だが俺にはすごく可愛く感じた。
「ああ、そんなところだ」
本当のことなど言える訳がない。円堂は少しだけ俺をたしなめると、俺の体をもう一度寝かせた。冷たいタオルが額に当てられる。
「もう練習戻ってもいいぞ」
そう呟く。本当はもう少しここに居てほしかったが、円堂の迷惑にはなりたくない。だが円堂は動こうとしなかった。
「もうちょっと居させてくれないか?」
円堂が目を伏せて言う。いつもの明るい声と違って囁くような感じだ。
「…心配なんだ、アツヤが」
円堂はそう言うと俺の髪を優しく撫で、白い歯を見せて笑った。もし円堂が男で俺が女なら一発で恋に落ちてるレベルだ。いやもう恋に落ちてるけれども。顔が赤くなるのが分かった。円堂の回りに、キラキラしたオーラが見える。
「ありが、とう」
声が詰まる。円堂の垂れ流しのフェロモンにやられたみたいだ。
「俺が勝手にしてるだけだから」
にこっ、とまた円堂が笑う。今なら、自分の気持ちが言えそうだ。
「あのさ、円「アツヤ大丈夫ー?」
ガラガラ、とキャラバンのドアが開く。へらりとした顔の士郎と、不機嫌そうな立向居と、タオルを持った木野という名の雰囲気クラッシャー達がいた。ちくしょうこの野郎。
「キャプテン、アツヤ大丈夫そう?」
「ああ」
士郎と円堂が話し出す。その間眉間にしわを寄せて黒いオーラを放つ立向居がずんずんと寄ってきた。
「皆の目の前でお姫様抱っことは、随分見せつけてくれますね、アツヤさん。」
耳元で立向居が呟く。その瞬間、意識が途切れる寸前のことを思い出してまた顔が赤くなった。
「あ、いや、はは…」
力なく笑うと、立向居はもっとムスッとした顔になった。
「はあ、俺だって円堂さんにお姫様抱っこされたいのに…」
立向居が口惜しそうに言う。え?ちょ、
「…は?」
どういうことか、そう言おうとしたがこっそり立向居の言葉に頷いた木野を見て何も言えなくなった。


ライバル多くね?



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