※カニバリズム要素有り


僕ねえ、好きな人とはひとつになりたいんだ

そう電話越しに染岡君に言うと、吹き出したような声が聞こえた。
「お前、そんなことよく言えるな、」
染岡君はどうやら恥ずかしがっているらしい。気まずそうに唸っている。
「何で?素晴らしいことだよ。」
そう伝えると、染岡君は溜め息をついて、恥ずかしい奴、と言った。よく意味が分からない。
「相手もそう思ってくれるといいなあ」
アホ、と染岡君が言って電話が切れた。よく分からないが照れているらしい。後で謝罪のメールでも送っておこう。

ぐう、とお腹が鳴る。時計を見ると既に8時を回っていた。夕食を作らなければならない。僕以外誰もいない家の廊下を歩き、台所へと向かう。暖房のきいた部屋との温度の違いに、心臓も凍えるようだった。チッチッチ。コンロの火をつける。フライパンを熱している間冷蔵庫からパックの肉を取り出した。じゅわ。油をひいたフライパンに肉を落とすと、そんな音がした。
じゅうじゅう。
ふと考える。もしこれがキャプテンの肉だったら、もっと美味しそうに見えたんだろうな。
じゅうじゅう。
逆も考える。これが僕の肉で、これをキャプテンが「美味しそう」と笑って食べたなら。
じゅうじゅう。
キャプテンの肉を焼いて、血を飲み物の代わりにして、白いナプキンを首に巻いて、赤いテーブルクロスで血が散っても分からない様にして、その肉の真ん中にフォークを突き立てて、
じゅうじゅう。
キャプテンが僕を好きで、僕もキャプテンが好きだから、もしキャプテンが僕の肉を食べたいって言うなら僕は喜んで了解して、まずは二人の右腕を切って、お互い交換して、焼いて、食べて、美味しいって笑いあって、次に左腕を切って、焼いて、食べて、美味しいって笑いあって、
じゅうじゅう。
「あ」
少し焼きすぎた肉を見て、慌てて火を消す。もう少しで黒くなる所だった。
「足切ったらサッカー出来ないや」
キャプテンは腕を切ったらゴールキーパー出来ないし。もう一度考え直そう。肉を皿に移すと同時に、そろそろキャプテンから週に一度の電話の来る頃だな、と一人笑った。




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