※数年後

あれは5、6年前だっただろうか。イナズマジャパンが帰国する日に円堂に呼び出され告白された。付き合ってくれ、と顔を真っ赤にした円堂を見て、なんとなくOKした。円堂のことは嫌いではなかったのもあるが、俺に同性愛の趣味は無く、本当に何となくだった。そのことを話すと飛鳥とカズヤはもちろんディランまで驚くという始末だったが。
「君 この前ミーとAV見たじゃない」
すごいAVだった、モロ無修正だった、興奮した。だから自分は女が好きだ、と言うとカズヤがムッとした顔になった。
「何それ、円堂はなんなのさ」
「円堂は別」
反射的に口が動いた。カズヤもびっくりしたように目を開けていたが、俺の方がびっくりした。そんなことを思ってなどいなかったからだ。
「そうか」
飛鳥が安心した様に笑って、それが円堂の親のようで、良心がちくりと痛んだ。

そして、今。

「マーク、今日鍋にしようぜ」
俺と、サッカーのことで留学してきた円堂は同居していた。恋人関係は続いているから同棲といった方がいいかもしれない。
「ああ、いいよ」
そう返すと、アメリカの冬は寒いからな、という円堂の明るい声がキッチンから聞こえた。
あれからデートしたり喧嘩したりして、キスを数えれる程度した。本当はまだ自分の気持ちに整理がついていなくて、何度かそれを言い出そうかと思ったが円堂のにこにこ笑っている顔を見ると何も言えなくなる。ディランにそう相談すると「君、思ったより円堂のこと…」と言って、そこで言葉を切りにやにや笑っていた。その後そのことを何回問いただしても答えてくれなかった。
「マーク、何鍋がいい?」
円堂がキッチンからぴょこりと顔を出す。昔より少しだけ伸びた髪の毛も一緒に揺れていた。
「なんでもいいさ」
「じゃあ豪華にすき焼きだー!」
バイト代入ったし、と円堂が嬉しげに笑っている。可愛いな、と思った。

(ん?)

ちょっと、ちょっと、ちょっと待て。今、俺は、円堂を可愛いと思った?
頭をぶんぶん振る。ああ、ついに恐るべき事態が起こってしまったのか。
(いや一之瀬だって睫毛長くて可愛いし土門だって腰細くて可愛いしディランだって口調が可愛い、そういう可愛いだよなきっとこう友情のような)
チラ、と円堂の方を見る。円堂と目があって、彼が微笑んだ瞬間胸が跳ねた。
(やっぱ、り)
ふう、と溜め息をつく。円堂は恐ろしい。あの時告白を軽々しく了解しなければよかった。
(俺、円堂が好きだ)
もう一度深く溜め息をついて、手伝いをするためにキッチンへ向かった。



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