※女遊び激しい久々知
※思春期5年




熱が収集して、頭の裏側が真っ白になった。目の前の汗で崩れる白粉も、赤く濡れた唇も、喘ぐ声もどうだって良くなる。ただ、この気持ち悪い欲心を消え去ってしまいたい。絡み付いてくる白い腿を持ち上げ、中からずるりと自身を出す。そこから吐き出された液は、名前も知らない女の腹の上に、白く広がった。

「兵助ってさあ。割と見た目と違うよね。」
かちゃかちゃと食器が擦れ、生徒がわいわいと喋る食堂の中でも、勘右衛門の穏やかな声は不思議とよく聞こえる。
「そうかあ?」
「うん。真面目で優等生で堅物って感じするけど、別にそんなでもないし。」
そう言うと、向かいに座る勘右衛門はぐっと体を乗りだし、じいっと俺の首筋を見た。きっと昨日の跡を見ているのだ。長ったらしい前戯は、好きではないと言ったのだが。
「男として普通に生きてるつもりだよ。溜める方が体に悪い。」
そう言って米を口の中へ掻っ込むと、勘右衛門は確かにそうだけど、と体を引っ込めて苦笑いした。
「ちょっと顔がいいからって、すぐ娘を引っかける。嫌な男ね、罪つくりだわ。」
しなを作って、ふざけた様子の三郎が隣に腰掛ける。その隣に雷蔵が座り、勘右衛門の隣に八左エ門が座った。
「朝から気持ち悪いことするなよ。」
「下世話な話してる奴に言われたかないね。」
文句を言った俺を三郎は馬鹿にするようににやっと笑うと、雷蔵の方へ首を向け、何やら今日の実習について話し出した。
「女泣かせだなあ。どれ、隠し子とかいるんじゃないか?」
八左衛門がからからと笑った。こういう話題に、彼の笑い声は不釣り合いだ。
「嫌なこと言うなよ、外で出したりしてるんだから、子供が出来ることはないだろう。」
「そういうのは伊作先輩に聞けば?丁寧に教えてくれるよ。」
何か色々言われそうだし遠慮しとく、と味噌汁を啜る勘右衛門に言うと、彼は口だけで笑った。
「というか、何か、俺おかしいかも。」
昨日からずっと重しをしていた言葉が口からこぼれ落ちる。4人の目が、一斉にこちらを向いた。
「どこかの娘に惚れて駆け落ちでもするとか?やめてよ、木下先生の怒りの矛先がこっち向いたらどうしてくれるんだ。」
「女遊びがすぎてどこぞの男から恨みを買ったか。まあそれも人生だ、つうかお前は刺されても死なんだろうしな。」
「やっぱり隠し子だ。世話する女が逃げたのか。兵助が子供の世話をするなんて、何とも似合わない。」
「いいや、遊びが過ぎて体を壊したのかもしれない。兵助、大丈夫?高学年ともなると体の管理もしっかりしなきゃ。」
勘右衛門、三郎、八左エ門、雷蔵と、それぞれの勝手な予想混じりの意見が集中する。その見えない言の葉を追い払うように手を振って、静かに溜め息をついた。
「いいや。違う。」
そうきっぱり言い切ると、八つの目は一層興味深そうに光った。
「どの女としても、どうしてもすっきりとしない。快さがない。」
そう呟けば、全員こちらへ傾けていた体を元に戻し、魚の身を箸でほじくる作業に戻った。
「なあんだ、兵助が使い物にならなくなったって話か。」
「いいんじゃないのか?しばらく遊びも出来ないだろうし。」
勝手にそう結論づけた彼らの頭をぽかりと軽く叩いていく。勘右衛門はわざとらしく痛がり、ころころと笑った。
「僕のってある意味当たりだよね?」
そう満足げな顔をして言う雷蔵には、軽い頭突きをお見舞いしてやった。
「そうじゃない。何を誰としてても、あいつの顔が浮かんできて、困るんだ。」
そう言えば、また目線がこちらへ集まった。後一年で最高学年の癖に、わりと単純で分かりやすい奴らだ。
「なんだそれえ、久々知さんたら、不誠実!軟派!」
「ていうか兵助がそんな純粋に懸想してる子がいるなんてなあ、初耳!」
「教えてよ、僕らの知ってる子?まさかくノ一?」
きゃあきゃあと年頃の娘の様にはしゃぐ四人を苦々しく思いながら、湯呑みのお茶をあおる。
「誰にも言うなよ。」
言わないってえ、とまた騒ぐ4人に手招きをすると、全員がぐいんと身を寄せてきた。横を通り掛かった立花先輩の不思議そうな顔も、今は気にしない。
「…乱太郎。」
本当に小さな声で呟くと、四人はその体勢のままぴくりとも動かなくなった。先程までの賑やかさが嘘のように、しんと張り詰めている。
「乱太郎の顔が、昨日も離れなかった。最後の果てる瞬間も、真っ白な頭にそれしか浮かばなかった。」
そこまで言い切ると、勘右衛門はじいっと机の木目を見つめて、勢いよく息を吐き出した。
「兵助の、稚児趣味!」
そう叫んだ後、さっきから煩いんだよ、と潮江先輩に叩かれた勘右衛門を見て、他の三人はぴたりと何か言いかけた口を閉じた。
「お前さあ…」
三郎はそう細い声で言ったが、その声はどんどん萎んでいき、終いには聞き取れなくなった。




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割とどうしようもない系な久々知さん推しです


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