「やあ」
人懐こい笑みを浮かべて片手をあげる少年を、一之瀬はよく知らなかった。つい先日まで行われていた世界大会のイタリア代表だということぐらいの知識しかなく、更に話したことなど皆無のようなものだ。それなのに、旧友に挨拶するかのような男の態度。よく友好的な性格だと言われる一之瀬にも、それは理解できなかった。
「えっと、…フィディオ?」
「ああ!はじめまして、カズヤだろ?マーク達からよく聞いてるよ!」
そう言うと男は一之瀬の肩に手を回してぽんぽんと叩いた。この親しげな様子は国民性なのだろうか、と一人ごちる。
「あと、マモルからもね。」
ほんの少し低くなった声に、一之瀬は思わず視線をフィディオに向けた。彼はといえばにこにこ笑ったまま相変わらず手を肩に回してくる。身をよじって彼から離れると、その正面に立った。
「ああ、円堂の知り合いね。」
そう一之瀬が呟くと、フィディオは大きく頷いて「そうそう!」と言った。
「ね、カズヤはマモルの目ちゃんと見たことある?」
がらりと変わった話題に一瞬首をすくめると、フィディオがくすりと笑った。
「やあ、大した話じゃないよ。軽い話題だから」
フィディオは無表情でも柔らかな顔をしていた。小さく嘆息して彼の目を見る。一之瀬は今日、フィディオのペースに乗せられっぱなしだった。
「あるけど。」
「あの、目を見るってマモルの顔の一部として見るんじゃなくて、目だけを見るってことだよ。」
「…あるよ。」
一瞬フィディオが見せた笑みに、羞恥で顔が赤くなる。フィディオは少し眉を潜めると、じゃあ君はマモルのことが好きなんだね、と呟いた。
「え?」
またも突飛な話題の転換に、間抜けな声が出る。フィディオはきょとんとした顔をしてこちらを見ていた。
「違うの?」
「えっ、いや…その、どうしてそう思ったのか聞かせてほしい。」
「いや、嫌いな人の目はじっと見ないなあって思ってさ。ごめん、正直言うとかまかけた。」
「えっ!?」
また素っ頓狂な声が出た。嘘を言って俺に本音を言わせたというのに、彼といえば涼しい顔をしている。本当に今日は彼に乗せられっぱなしだ。
「はは、カズヤは面白いね。…っと、ごめんねいきなり引き止めちゃって。俺も練習しなきゃだしそろそろ帰るよ。」
そうやって白い歯を見せて笑うフィディオの目は、まったく笑っていなかった。一方的に喋り終えた彼は、くるりとこちらに背を向け、それから一言ぽつりと言った。
「俺もマモルの目を見たことあるよ。明るい、女の子の目だよね。」
それからフィディオはすたすたと振り返りもせずに歩いていった。はああと息を吐き、彼の足跡を睨みつける。
「要するに、牽制かよ。」


---------------
アオバちゃん
→お久しぶりですアオバちゃん!リクエスト消化が遅くなって本当にごめんなさい…!毎回アオバちゃんが下さるリクエストを楽しみにしてます^//^
一円♀フィ書いていて楽しかったのです…が…乱雑にも程があって申し訳ないです^〇^あと女の子設定がいかしきれてなくて…書き直しいつでも受け付けます!
これからもよろしくね(´∀`)!!リクエストありがとうございました!


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -