来たるXデー、というかつまり今日。円堂が「お前の家行ってみたい」という発言をしてから一週間。期待という言葉で表せない、緊張という言葉さえ小さく感じる、そのことを考えると胃がぎゅっと締められて逃げ出したいような待ち遠しいような、とりあえず何とも言えない気持ちが血管を巡る。先ほどから頬が火照り、もう一生分くらいの汗が流れた気がする。あの無機質なぴいんぽんという間抜けな音をまさかこんなに待ち遠しく思う日がくるとは。今の俺にとってチャイムはオーケストラの演奏、いや天使が鳴らすファンファーレだ。
「次郎、おやつ買っといたわよ」
「ありがと!」
母さんの声に投げやりに返事しながら、部屋の中をごろごろと転がり回る。別に期待なんかしちゃいないけど、部屋、特にベッド回りは綺麗に掃除した。机に乱雑に積み重なってた教科書やプリントも今は引き出しにきっちり収まっている。ベッドの上のサッカー雑誌も本棚へ収納し、布団も干してみたりした。準備は万全って、まあ別に期待なんかしてないんですがね。まじで。うんしてない。
円堂と付き合い始めてからはや一ヶ月。部活を終えてへとへとの状態ではろくに連絡を取り合えないから、円堂と話すのは実に四日ぶりになる。大変お恥ずかしながら今だに円堂と目を合わせるとドキドキしてしまうから、今日でそれにちょっと区切りをつけたい。そう、今日俺は、円堂と進展しようと思ってピーンポオオン
「次郎、お友達ー」
「うわっ、おう!」
慌ててフローリングから起き上がり、こけそうになりながら玄関へダッシュする。この瞬間をどれだけ待ったことだろうか!心臓が活発に運動しすぎて息がまともに出来ない。玄関の磨りガラスは、ぼんやりと茶色の髪を透かしていた。
「え、んど」
「おう!やっほー!」
バンダナを外し、黄色のパーカーと濃い青のジーンズを着た円堂が右手を軽く振った。合宿等の寝間着を除けば私服を見るのはこれが初めてだ。シンブルだが爽やかな黄色が光に当たり、目に眩しい。
「お、おー」
ドアノブを握る手が汗ばむ。サッカーの試合中にだってこんなに汗ばむことはないのに。
「あのさ!」
じゃあ中に、と言おうとしたところで円堂が声を上げた。茶色の目の奥がぴかぴか光っている。
「今日いい天気だし、すぐそこ公園だし、サッカーしないか?」
滅亡せまる地球を救う策を考えついたハリウッド映画のヒーローのごとく、名案だと円堂が笑った。


公園から帰ったその夜、サッカーは楽しかったけれど、帰りに円堂が繋いできた手の温かさだとか掃除の虚しさとか色んな感情がまざって、ちょっぴり泣いた。


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徠音様
→はじめまして!10万打ありがとうございます…!
円堂が家の中に入ってすらなかったり甘さが足りなかったりとリクエストに沿えてない感がぷんぷんしてますね(^o^)書き直しいつでも受け付けてます!
リクエストありがとうございました!



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