これの続き


口角が自然に上がり、唇の隙間から好きな歌がぽつぽつ漏れる。舌の上を通り発せられるのは「やった」という言葉しかなく、足が勝手にステップを踏んでいた。やった、やった、やった。その足でリビングへ入ると、南雲が一人コップに牛乳を注いでいた。ああ、今日はとことんついてる、何ていい日なんだろう。
「やあ。」
そう言うと、彼女は一瞬体を大きく揺らして、こちらを見ずに頭を下げた。恐らくこの前の−牽制というには生温い−あの行為が効いているのだろう、しおらしい南雲という図に何だか笑いが込み上げる。
「聞いてよ、俺さあ、イナズマジャパンのメンバー、円堂くん達と同じチームになれるかもしれないんだ。」
早く先を言いたくて仕方ない、早口の声に南雲は目を見開いた。体のどこかが満たされて、優越を構築する音が聞こえる。南雲の目が恐れを持ったように震える。そんな風にしていれば、円堂くんが可愛いって言ってくれるのかい?
「ざまあみろ、南雲。君はサッカーが出来ないんだよ。いくら上手くったって、円堂くんに気に入られたって、子供が産めたって、彼の隣にずっといることなんか出来やしないんだ!あっはは!」
「基山!」
南雲と俺の声が重なり、顔のすぐ横にクッションが飛んできた。泣きそうな声で眉を吊り上げる南雲はこれっぽっちも怖くないし、むしろ可笑しい。
「ヒステリック、いやだな女って。」
「…負け惜しみにしか聞こえねえよ。」
南雲がこちらを睨んで、チッと舌打ちをした。発言にいらつくけれど、その言葉が実は俺の根底にあるのも本当だ。でももう動揺したりはしない。決めたんだ、俺。
「ねえ、覚えておいて南雲。俺はこの合宿中に円堂くんをどうすることも出来るんだよ。」
耳の奥で自分の声がぐるぐる螺旋して、頭が痛くなってくる。これはきっと興奮のせいだ。
「足を刺しても、性器を切り落としてやっても、無理矢理襲ってやってもいい。諦めてよ、何事も起こらない内に。」
譲らないって、手段を選ばないって決めた。だから今こうやって彼女と対峙している。一生勝てない、しかし負けもしない彼女と。
「うぜえ奴。」
南雲が馬鹿にするように、それでも焦りの混じった声を漏らした。ああ、ああ、こんな奴のどこがいいんだろう、なんて、もし逆の立場だったら南雲もかとそう思っていただろう。
「何とでも言えば。」
だけれど、そんな仮定はどうでもいい。俺は男で彼女は女で、ただそれだけなのだから。


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得美様
→こんばんは〜!うわわわ100000打ありがとうございます!!私の小説でニヤニヤしてくださるなんて…!!ありがたいです!!
リクエストですが、質の悪いドロドロ感と怒涛の急展開で申し訳ないです…(^o^)/「押し潰されて、殺される。」は趣味が丸出しだったのですがそう言って頂いてほんとうに嬉しいです!書き直しいつでも受け付けてます(´//`)
リクエストありがとうございました!

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