※数年後

彼のたくさんの透明な色が混じった目がきゅっと細くなる。その上にたっぷり乗った色素の薄い睫毛がぷると震えて、涙袋が目と反比例して膨れる。彼の短く切った爪が耳に当たり、体温の全てがそこに集まったかのように、敏感にぴりりと反応して、すごく恥ずかしくなった。焼けた長い腕が腰をぐるりと半周して俺を抱きしめているのを、温度で感じるのと視覚で感じるのはまた違う。彼の固い胸と自分の薄い胸がぴったり密着しているのが何だか見ていられない。ぎゅっと目を閉じると、耳に当たっていた手がするりと頬を撫でた。
「円堂」
柔らかく落ち着いた声に鼓膜が揺れる。それがまたどうにも羞恥心をあおぐから、首をちょっと曲げて俯く。彼はそれが気に入らないのか、抱きしめている左手の力をさらに強くした。
「俺さあ、お前のこと好きだ。」
目を少しだけ開けて、ちらりと彼の顔を覗きみる。本来色の変化が分かりにくいはずの焼けた肌は、赤く染まっていた。
「だからさ」
軽く彼の胸を叩いて、ぱっと顔を上げる。数センチしかない距離を埋めるように背伸びをすると、彼は驚いたように目を開いた。彼の言いたいことなどもうとっくに分かっている。
「俺、ゴーヤ苦手だから絶対飯にはださねーぞ。」
それを聞いたあと、彼はふっと笑って「うまいんだけどなあ」と言った。彼の思い浮かべているほかほかと湯気をたてるチャンプルー、それを囲む笑い。その中に自分が含まれていると思うとたまらなく幸せな気分になるのだった。


-------------
プロポーズのおはなし

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -