「私達の関係は特別だ」
そう繰り返し笑うエドガーを見てこっそり息をつく。イギリス人に限らず、外人ってのはどうもロマンチストらしい。日本では皆が口に出さないような歯どころか舌も浮く甘い言葉を彼はよく喋る。対しての俺は仲良くなった奴からは日本人でも「意外と考えがクール」だとか「現実的」とか言われるのだ。そんな俺らが出会って真反対の性格なのにこういう関係になったことを、彼は特別だと言う。運命だと言う。俺はいつも曖昧に笑って返事をしない。そんな時エドガーはふっと悲しそうに笑って、俺を抱き寄せる。茶色の髪と水色の髪が微妙なコントラストを生んで、それを見るのが好きだ。彼の体温は俺をほっとさせる。今だけは周りを気にせずいれると思えた。本当はエドガーも、気付いているのかもしれない。それを彼は敢えて無視しているのだ。すっと俺の体を離すと、用事があると言ってエドガーは去っていった。その後ろ姿を眺めながら、すっと息を吐く。

「俺達はただの中学生で、自活能力もないから親の脛をかじって生きてるようなもので、恋愛のれの字がやっと分かりかけるかくらいの人生経験しかなくて、ボールを追いかけて転んで、汗くさいことばっかして、馬鹿みたいに大口開けて笑って、甘くないものばっか食べて、お城もなければ馬車もない、かわいい童話みたいな生活と掛け離れてるのにそれを楽しいと感じてる、特別も浪漫もない、周りの目が気になるだけの、異端で、正当化したいだけの、子供なんだよ。」

いつの間にか零れていた涙が口に入った。エドガーはもう見えない。口内に広がる塩辛さは、しばらく消えそうになかった。


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偏ったリアリストな円堂さんと本当はリアリストなエドガーさん


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