※暗め
※ヒロ円(→)大


「こんにちは、俺は基山ヒロトです。本当の名前はよく覚えてません。仮に基山太郎だって基山明だったってそんなの何でもいいのです。人の名前なんていうのは対して重要ではない、判別をするだけのものですから。ああ話がずれました申し訳ないです。本題に入りますね。あなたがいう、世間一般がいう父母とはどんなものですか?安心できて優しくて、自分を愛してくれる人、だと俺は思います。俺にとってのそんな存在は父さんでした。いや、父さんしかなり得る人がいなかったと言った方がいいでしょうか。誰も守ってはくれなかったので、父さんの本当の息子に似ているだけの俺は、憧れた本当の家族を目指していたのです。でもそれは俺だけでした。本当に悲しいことでしたけれど、俺には円堂君という新しい存在ができました。彼は輝いていました。愛されなかったことなどないであろう存在は、俺には少し眩しすぎて、思わず吐き気がしました。自分があんなに苦しい思いをしていた間も彼は笑っていたのかと思うと、逆恨みですが、とても腹が立ちました。彼を陥れてやろうとして近づいたのに、彼は俺にとても優しく接してきました。彼の明るさをなんと形容したらいいのでしょうか。あの時思った感情は紛れも無い恋でした。生まれて初めて恋というものを感じました。好きなんです、俺の唯一なんです。彼も俺を『好きだ』と言ってくれたんです。本当にすごい奇跡だなあと思いました。何十億分の一の確率で、しかも同性という壁を彼は壊して、俺を好きだと笑ったんです。誰にも愛された彼が俺を愛したという事実はこれ以上ないくらい俺を幸せにしたんです。けれど、彼もまた嘘を言っていました。彼自体は自覚していなかったかもしれないけれど、あれは嘘です。それがまた悲しいのです。円堂君は俺が一番好きなのではない、あなたが好きなんです。俺と彼を繋ぐサッカーという影響を与えたのはあなただ。それがまた憎らしいんです。俺の好きな人の好きな人が、俺達を出会わせたのが、たまならく鬱陶しいんです。いっそ消えてしまえばと思っています。だから実行することにしました。だって、円堂君はいつだって俺の背中を押してくれるんです。俺のやることに間違いはないとそう言ってくれるんです。だから、今回もきっとそうです。かつて父さんが言ってくれたように円堂君も言ってくれます。」

無表情で、ろくな息継ぎもせずに目の前の少年は言った。完全に据わった目は14歳のそれではない。光なんてものはなく、ただただ奥が見えなかった。
「お前も、守も、可哀相だ。」
そう呟くと、目の前の彼は変わらぬ無表情のまま首を捻った。本当に意味が分からないといった様子だ。家族愛と情愛の区別のつかない少年と、その少年を本気で好きになっている孫。強張った顔で「消す」という彼は、その言葉をよく理解するには若すぎる。
「お前たちは可哀相だ。」
目の前の少年のポケットにはきっと小型ナイフでも入っているのだろう。その意味を理解するのに、やはり彼はまだ幼いのだろうか。

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ずるずる落ちてく二人
ちなみにこの後大介さんはナイフを華麗にかわします


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