※幼なじみな二人

「コンビニ行かね?」
久々に晴矢が泊まりにきた夜、風呂から上がってくつろいでいた彼がふとそう言った。確かにそう提案されると、渇いた舌がアイスやジュースの甘い誘惑を待ち望んでいるように思えてくる。だいぶ布が擦れてぼろくなった財布を片手に立ち上がると、「まだそれ使ってんのかよ」と晴矢が馬鹿にしてきた。むかつく。
「にしても俺ら、泊りとかもう一年ぶりくらいだよな。」
スニーカーを履きながら晴矢がぽつりと言う。母ちゃんからせしめた千円を財布に入れて頷いた。
「部活忙しくてお互い暇な時間が合わなかったからなあ。」
「まさかこんなに家が近いのに、学校が別になるとは思わなかったよな。」
地区ごとに分けるとか何とかで俺達は別の学校に通っている。あの時の鳩が豆鉄砲をくらったような顔の晴矢を、俺は多分一生忘れない。
「いってきまーす」
既に寝ている父ちゃんの邪魔にならないよう小声で言い、生温い風の吹く外へと踏み出す。むしむしとしたこの熱気は恐らく日本特有のものだろう。
「汗流したのに、また汗掻いちまう。」
暑さに溜め息をついた晴矢の顔は、俺の目線よりちょっと上にある。ついこの前まで同じくらいの身長だったのに、成長期の違いか今では晴矢の方が背が高い。まあすぐ抜かしてやるけど。
「まあコンビニまで3分もかかんないしさ。」
みんみん五月蝿い蝉の声と、温く吹く風の音と、サンダルが小石を蹴る音。それらをBGMに晴矢と他愛もない話を続ける。昔から変わらないはずの話題に違う印象を受けるのは、俺らの関係自体が変わったからなのだろう。
「到着ー」
タンクトップから伸びる晴矢の腕には程よく筋肉がついている。顔も昔より丸みが無くなり、また鼻筋が通っていて、幼さが消えかけていた。
「何買うかな。」
たまに晴矢を別人のように感じることがある。彼の薄い唇から転がるのは知らない出来事、知らない名前、知らないことだらけだ。それがなんだか寂しくて溜め息をつく。女々しい細かいことだと分かってはいるのだが。
「おー、涼しー。」
コンビニの自動ドアが開くと同時に冷気が体を包み込んだ。晴矢も同じように感嘆の言葉を漏らして、そのままアイスコーナーへ歩を進めていった。
「泊めてもらう礼に何かアイス奢ってやるよ」
「まじ?やった。」
笑う晴矢の横に立ち、アイスを吟味する。これにしようと決めた瞬間、目の前を腕がすっと横切った。
「これだろ?」
晴矢の手にはチョコレート味のカップアイスがある。それは正に食べたいと思っていたものだ。どうして分かったのだと晴矢を見ると、彼は声に出して笑った。
「何年もお前といて、お前を見てたらそれくらい分かるっての。」
そう言って彼は自分用であろうバーアイスをさっと取ってレジへ向かっていった。
夜のコンビニ、最高。


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彩香ちゃん
→お祝いの言葉ありがとうございます!私が鬼畜を書くとギャグになってしまうので幼なじみを書かせてもらいました…が…すっすみません…。私がコンビニに行きたいだけです(^o^)書き直し受付中です!リクエストありがとうございました!


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