ベンチに座って、空の色はどこも変わらないなあなんてぼんやり考える。耳に入ってくる喋り声は日本語から英語に変わって、目の前を過ぎていく人達も黒から金になっていた。こっちに来たのは二週間前だというのに、その光景に何だかまだ慣れない。辺りを見渡せば、あのオレンジのバンダナが目に入る気がした。
「ハーイ、カズヤ」
ぽんと肩を叩かれて振り向くと、ディランがぱんぱんに菓子の入った袋を持って立っていた。それから俺の横に座り、ビニール袋からゼリービーンズを取り出す。ばりばりと袋を開封する音が聞こえた。
「マークにいっぱいもらっちゃってさ。一緒に食べようよ!」
ディランがニカリと笑った。普段は騒がしい彼だけれど、今日は俺に遠慮しているのかいつもより静かだ。そんな心遣いにふっと笑いが漏れる。
「ありがと」
ゼリービーンズを一つつまみ、口にぽいと投げ込む。ぐにゃりとした食感が歯に当たり、それから甘ったるさが舌に広がった。こっちの菓子は日本とは違い味が濃くてやけに甘い。しかし俺はそれが嫌いなわけでなく、むしろ懐かしさを感じるのはこちらだ。日本の菓子の味は、思い出といったところだろうか。ふと彼が笑って半分くれたソーダ味のアイスを思い出す。
「…いい天気だね。」
そう言ってディランをちらりと横目で見ると、彼は少し笑っていた。
「何?」
「カズヤ、気付いてないの?」
ディランはついに笑い出した。いつもの彼の賑やかで明るい笑い声。
「ずっとオレンジばっか食べてるよ!」
カラフルなビーンズからオレンジ色だけが消えていた。自分の手にあるオレンジ色のビーンズを見て、顔が熱くなるのが分かる。
「それあげるよ!ミーは今日出かけるからそろそろ行くね!」
ディランは腰を上げると、風のようなスピードで走り去った。ユニコーンの仲間は皆いい奴だし、一緒にいて楽しい。クラスメイトだって明るくてよくしてくれる。けれど、頭に浮かぶのは円堂のことだ。こうやってベンチに座っていても、円堂が隣にやってきて「よう」と話かけてくる気がする。たった二週間、それなのに隣を走る柔らかな茶色の髪が頭から離れない。自分を呼ぶ明るい声が耳にこびりついたままだ。
「…はーあ。」
俺はどんだけ円堂のことが好きなんだ、そう小さく呟く。飲んだはずのビーンズは喉に甘ったるさを残したままだった。


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アオバちゃん
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