冬の朝の走り込みはすごく気持ちがいい。ベストなのは、まだ日が出てなくてちょっと空が薄暗い時間。ジャージを来て青色のタオルを首にかけて、買ったばかりのピカピカのスニーカーを履くと、やる気がむくむく出てくる。そんないい朝だったのに。
「げ」
すごく小さな声でそう漏らす。河川敷の向こうから出てくる朝日を見てすごくいい気分になっていたのに、その河川敷では円堂守がサッカーボールを転がしていた。僕の憧れの先輩だった風丸さんを、無理矢理みたいな形でサッカー部に入れた人。そりゃあ今は一応サッカーしてる風丸さんを応援してるけど、やっぱりあの人には陸上部にいて欲しかった。彼と陸上をするのはとても楽しかったから。
ふと円堂守が顔を上げる。なんということだろうか、ばっちりかっちり目が合ってしまった。
「よっ」
馬鹿でかい声で彼が手をあげる。朝からやかましい、ご近所迷惑って言葉をしらないのだろうか。
「…どうも。」
小さく礼をして立ち去ろうとする。が、円堂守はにこにこしながらこちらへ寄ってきた。
「宮坂、一緒に走ってもいいか?」
彼と自分が接触した回数はとても少ない。なのに何故彼は自分の名前を覚えているのか。そう思って一瞬どきりとした。
「…ご勝手に」
きっぱり却下してもよかったが、こういうところで自分は生温い。円堂守はにっと笑うと、僕の横を並走した。
「宮坂はいっつも朝走ってんのか?」
「ああ、まあ。」
円堂守との距離が近い。いつも風丸さんは彼とこのくらい近くにいて、でも今は僕がいる。
「俺も朝練習してんだ。…なあ」
ぱっと円堂守がこちらを向いた。口から出た白い吐息が頬に当たって、何だかその部分だけ熱く感じる。
「もしよかったらこれから一緒に練習しないか?」


断れなかったのは、僕が生温いだけ!


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ツンデレ宮坂を推します


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