「なあんだ、乱太郎かよ」
学年合同演習でのペア決めのくじ引き、私とおなじ「甲」と書かれた紙を持った伝七が言った。顔は嫌そうに歪んで、それでも意地悪く笑っている。いやみのい組らしい表情だ。
「悪かったね」
「精々足引っ張らないでくれよ。」
ふっと笑う伝七は顔だけ格好いい。男らしく太い眉とぱっちりした目、鼻筋もすっと通っている。現にこの前くノ一に恋文を貰っているのを見た。
「私たちは実戦慣れしてるからね。」
そう吐き捨ててそっぽを向く。伝七が何事かぎゃあぎゃあ言っているけど無視。
「ペアを確認したら一旦戻りなさい」
土井先生が言う。伝七に振り返って舌を出す。伝七は悔しそうに顔を赤くして、同じようにあっかんべーをした後自分の組の位置に戻っていった。
「乱太郎、伝七となんだ。」
前に並んでいる兵太夫が振り向いた。うんと頷くと、彼がちらりと歯を見せて笑う。
「…そっかあ。」
何だか含みのある笑いだ。どうしたの、と言うと兵太夫はにやにやとして私に耳打ちした。
「昨日伝七が乱太郎とペアになりたいって一人言言ってたの、聞いちゃった。」
その日の演習はミスをしっぱなしで、伝七に散々馬鹿にされるわ兵太夫に生暖かい目で見られるわで最悪だった。