※サッカー選手の円堂と子供フィディオ

ある夏のイタリアvs日本の試合を見てから、俺の夢はサッカー選手になった。その試合はイタリアに珍しい負け試合で、一緒に見ていた他の皆が悔しがってたにも関わらず、俺一人だけ興奮していた。その試合は日本のゴールキーパーの選手の初公式試合だったらしく、彼がシュートを止めた時の日本側の歓声も一際大きかった。
「円堂、守…」
そう彼の名前をうっとりと言うと、ジャンルカはびっくりした様に目をぱちぱちとさせた。

その日は学校がいつもより早く終わり、皆を誘ってサッカーをしていた。遊びでも、俺はゴールキーパーをすることはなかった。いつか円堂守と同じチームになり彼を支えられるFWになろうというのが夢だったのだ。
「フィディオ、いったよー」
アンジェロが声をかけてきた。慌ててボールを蹴ると、方向を間違えてしまい、後ろに飛んでいってしまった。
「うわ、あ」
反動で後ろに転がる。反転した景色で、蹴ったボールが誰か男の人にぶつかりそうになるのが見えた。
「危ない!」
反射的に叫び、起き上がる。男の人はこちらを向くと、綺麗な動きでボールを靴の先で蹴り、上手にリフティングし始めた。あまりの滑らかな動きに何も言えなくなった。
「これ、君達のかい?」
男の人が、にかっと笑う。それは、テレビで見るあの笑みと同じだった。
「…円…堂守…?」
俺がそう言ったところで、皆が一気に歓声を上げた。すごいすごい、とそれぞれが声を張り上げる。
「おお、知っててくれたのか。」
感激だ、そう言うと彼はにこにこ笑いながらベントの頭を撫でた。
「知ってるさ、フィディオはずっとファンなんだぜ」
笑いながらマルコが円堂に耳打ちする。しかしその声は大きくて、周りの皆に聞こえるくらいだった。体の中が熱くなってくる。背中の方から変な汗が出てきた。
「そうなのか!」
緊張して胸がどきどきする。円堂は俺の方に手を出して、握手してくれ、と笑った。普通はこちらから言うものなのに。おずおずと手を出すと、彼は勢いよく俺の手を握った。
「イタリアで初めてのファンだ、うれしいぜ!」
そしてまた円堂が笑う。憧れが恋になった瞬間だった。



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