バスルームのドアを開ける。白を基調とした清潔な壁とバスタブに、私が映っている鏡が見える。鏡の中には裸の私がいた。鏡に近寄り、そこに映る自分をじっと見つめる。私が泣きそうに眉を下げれば、鏡も同じ様に眉を下げた。時々、鏡の中にはもう一人自分がいるのではないかなんて考えることがある。馬鹿なことだ、きっとお兄ちゃんなら考えない。キャプテンは、どうだろうか。
鏡の中に映る私の体は白い。少し膨らみ始めた胸に電球の光がピカピカ当たっていた。
「…キャプテン」
きっと心の奥では密かに優越感を感じていたのだ。男である彼と正式に性交のできる器官を持った自分と、兄を比べていた。しかしそれは間違いだった様である。だって私は、兄に向けられる彼のあんな笑顔を見たことがない。
「好きです」
私の気持ちはいっそ恋とかそんな風ではなかった。マネージャーの先輩方の様な、綺麗なものではない。好きという言葉さえ使うのも躊躇われる位だ。少し落ち着こうと、鏡に額をつける。ひんやりとして気持ちがいい。
「円堂、先輩」
自分の胸を見て、彼とのために役に立たないならいっそ要らないな、とぼんやり思った。



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