今日は寒いなあ、一人走り込みをしながらそう思う。苦手だった早起きもサッカーの為なら惜しくない。くしゅっ、と小さくくしゃみをした時だった。
「おはよーございます!」
にこにこ顔の音無がそう挨拶をしてきた。朝練が始まるには後30分もある。随分早起きだな、と言うと、チェックのマフラーを外しながら音無が笑った。
「キャプテンの方が早いじゃないですか」
一年だが既に自分を越えてしまった背を見上げる。マネージャーを務めている彼だが、選手に向いた体つきだなあと思った。
「音無って、運動神経いいよな」
そう言うと彼は首を傾げて、そうですかね、と言った。足元のボールを音無の方向へ勢いよく蹴る。咄嗟のことなのに、彼は軽々とボールをキャッチした。
「ほらな」
そう笑うと、音無は照れ臭そうに首筋を掻いた。綺麗な青色の目がぱちぱち開閉を繰り返す。可愛いというよりは格好いい顔立ちだ。そういえば彼はよくモテて、誕生日には袋一杯のプレゼントをもらっていたなあと思い出す。
「で、音無今日は何でこんなに早いんだ?」
リフティングをしつつ彼にそう問うと、音無の動きが止まった。ちらりと顔を覗きみる。どう答えようか迷っている様だった。
「そ、そのキャプテンと話が…」
「あ、分かった!何かマネージャーの仕事の相談があるとかだろ?」
「…え、ああ、はい!そうです!その通りです!」
音無は腕をぐるぐる回すと、さーてまず着替えなきゃ、と更衣室に走っていった。相談とは何だろうか。まさか、辞めたいとか?そりゃあ仕事は大変だしやることは多いけど、秋や夏未は優しいし、部も性格のいい奴らばかりだ。だとしたらまさか俺のこと?やっぱり女がキャプテンってのは不安だろうか。
「お待たせしました!」
そう考えている内に、黄緑のジャージに着替えた音無がやって来た。今から彼が言う相談について胸がドキドキする。
「で、どうしたんだ?」
「え、えっとですね」
いつもハキハキした音無だが、なぜだか今日は口ごもっている。不思議に思いながらも次の言葉を待った。
「えっと…あ!あの、部内恋愛って禁止ですか?」
音無がそう言った途端、ふっと笑いが零れた。恐らくマネージャーを共にこなしている間に秋か夏未を好きになったのだろう。今まで俺を鈍感と言った奴ら、今俺はむしろ敏感だぞ!はーはっはっはっ!
「ああ構わないぞ、頑張れよ!」
そう言って笑うと、音無の頬が赤くなって、それから目がきらきら輝いた。ばっ、と手を掴まれる。
「頑張ります!待っててくださいね!」
絶対いい男になりますから、そう言って音無が俺の手をぶんぶん握る。おう、頑張れよ!
「あ、キャプテン!」
音無が自らのジャージを脱ぎ、俺の肩にかける。
「女の子が体冷やしちゃ駄目ですよ。さっきくしゃみしてましたし。」
ねっ、と音無が笑う。確かに風邪を引いたかもしれない、先程から体がすごく熱いし!

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趣味ですすみません。
後輩×先輩おいしい


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