ゴンドラに乗せてくれよ、滅多にねだることをしない円堂がそう言った。だから俺も早々にゴンドラの準備をして、彼の座るところの水をしっかりタオルで拭いて、ちゃんとしたゴンドラで彼を迎えた。どうせなら女の子を乗せたかったよ、そう言ったら、円堂は本当に悲しそうに笑った。その顔を見て、ハッと謝りたいと思ったが、口からは何も出ていなかった。ゴンドラは誰にも見つからないようにこっそり出発する、円堂は目を細めて周りを見渡していた。
「こうかいって、思いの外楽しいな」
「…マルコから貰ったピザがそこにある。腹が減ったら食べてくれ。」
あえて彼の言葉を無視すると、彼はまた悲しそうにはにかんで、バケットからピザを取り出した。周りの人々が珍しげにこちらをじろじろと見てくる。それが嫌で、目を塞いだ。ゴンドラから下りないかと何度も言おうと思ったけれどとうとう言い出せなかった。ぎいこぎいこ、ゴンドラを漕いでいる内に、いつの間にか海に出ていた。広々果ての見えないコバルトグリーンの海を見て小さく口を開ける。こんな場所に来るのは初めてで、がらんとした海には恐怖を感じるしかなくて、何だか急に悲しくなった。
「ジャンルカ、帰りたい?」
すっかりピザを食べ終わった円堂が言った。頷くことも、首を振ることも出来ない。こんなに怖いのに、何故か降りたくないとも思える。
「…分からない」
そう呟くと円堂の顔が近付いて、それから唇と唇が触れた。女の子のそれとは違う厚くて固くてかさかさしたものなのに、拒むことが出来ない。
「男と男って何で恋人になっちゃいけないのかな。」
ずっと無理して笑っていた円堂の顔が歪む。同じように顔を歪ませて、その身体を強く抱きしめた。

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奥深さとかを表現したかったのに
奥浅さしか残らなかった…です…



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