※カニバリズム
※色々注意

人を驚かすことが好きだ。驚いた顔というものは、人間の本当の性格が見える。驚いたその一瞬人間は嘘をつけないものだ。見開いた目には自分を嘘で固める余裕など見えない。そこが好きで、好きな奴の本心が見えるとなれば更に楽しめるのだ。俺を女と思って近寄ってくる奴を騙すのもまた一興。

ぴいんぽん、とチャイムの音が鳴った。椅子に座ったままドアのほうに「入って」と声をかける。遠慮がちにドアが開いて、円堂が顔を覗かせた。
「どうしたんだよ佐久間、いきなり」
Tシャツにジーンズの円堂は片手に、土産だろうか、コンビニ袋を提げていた。手招きをすると、フローリングをぺたぺたと裸足の円堂が歩いてきた。
「どうした?」
「シチュー作りすぎちゃってよ。よかったら食べてくれないか?」
白いテーブルクロスの上にはカレー色のシチュー。銀食器が蛍光灯の光をぴかりと反射していた。
「いいのか?すっげえ豪華そう。」
円堂が早速席について、ハッと思い出したようにコンビニ袋を出した。中にはいくつかのスナック菓子が入っている。俺はその中の焼肉味というスナックを取り出して、ばりばりと袋を開けた。
「いただきます」
「俺も、いただきます」
スープを啜る音とスナックを口に含む音が同時に、そう広くはない部屋に響いた。
「お、これうまい」
そう言ってスナックをまた摘む。対して円堂は、眉を潜めた微妙な顔をしている。口の中で笑いを押し殺した。
「うまくない?」
「あ、や、そんなこと…」
円堂は嘘をつけない性分だ。顔を見れば彼の気持ちが分かる。それでも、やはり驚いた顔は見てみたい。
「正直に言ってくれ」
「…ちょっと肉がしょっぱいかな」
ごろごろ入った大きな肉をスプーンですくって円堂が言う。彼がそれを口に入れた瞬間、背筋がぞくぞくして腹がくすぐったくなった。
「やっぱりか。一応臭み消すのとか頑張ったんだけどな。」
部屋の匂いを消すのも大変だったし、掃除も大変だった、体液は意外と落ちないから。そろそろネタばらしでもするか。
「…円堂、テーブルの下覗いてみろよ」
そう円堂に笑いかける。彼の驚く顔を想像すると、鼓動が一気に早くなった。
「…下?」
円堂がスプーンを置く。どきどき。円堂が長いテーブルクロスを捲る。どきどきどき。円堂が下をさっと覗いた。どきどきどきどき。
「…!!」
円堂がばっと飛びのいた。バランスを崩した椅子が円堂を巻き込んで転がる。円堂は目を見開いていた。でも円堂、なんと今回は二段オチだ。
「佐久間…あ、足…」
円堂ががたがた震えている。俺はわざと落ち着いた様子で話を続けた。
「な、円堂。シチューうまかった?俺の足の肉、うまかった?」

円堂のこれ以上ない位驚いた顔もやっぱり可愛いな。


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