※数年後
※色々捏造注意

高校を違えた豪炎寺がサッカーをやめたと聞いた時、一番初めに思った言葉は「やっぱりか。」だった。元々中学生の時も続けれたのが奇跡のようなことなのだ。豪炎寺のお父さんは教育に厳しいから。
「あんまり、驚かないな。」
豪炎寺の話を教えてくれた風丸にそう言われ、小さく笑った。どこかで覚悟をしていたからだろう。豪炎寺だけでなく色々なことは、中学生の時のようにうまくいかないということを知っていた。
「まあな。」
風丸のすっかり短くなった髪を見つめて言う。走る時に邪魔だ、とあっさり切ってしまった。理由なんて知らないが、昔はあんなに切るのを嫌がっていたのに。

部活を終えて家に帰ると、8時を回っていた。心地のよい疲労感は昔と変わらずホッとする。ただいま、と母ちゃん父ちゃんに言いながら2階に上がった。小さく息をついて床に寝っころがる。
「やめるのかあ…」
携帯をちらりと見て、連絡しようと思ったが、はっとして携帯を閉じた。風丸に連絡をして俺に連絡をしなかった豪炎寺の気持ちを考える。サッカーをやめるということが後ろめたいから?まだやめるか迷っているから?俺より風丸に信用を置いているから?
「…はあ」
いつの間にか息を止めていたことに気付き、深呼吸をする。気持ちを落ち着けようと起き上がった。と、視界にちらりと入るものがある。ゆっくりと顔を動かしてそちらを見ると、木製の写真立に中学生の頃の写真があった。俺と豪炎寺が笑顔で写っている。ぶつん、と頭の奥で音が聞こえた。

気付いた時は、その写真立を床にたたき付けていた。はあはあと荒い息が喉を通っていく。じわりと視界が揺れた。
「何でやめたんだ」
破れた写真の中の豪炎寺は変わらず笑顔だ。分かっている、豪炎寺は悪くない。進路がすべて同じなわけなどない。それでも感情はせき止められず、涙は止まらない。
「何で変わるんだ」
変わらないものなどないと知っているつもりだった。風丸に諭したのは自分ではないか。
「何で、何で」




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