イギリスの海は綺麗だ、そう円堂に言ったことを思い出す。彼はその海に足を浸して笑っていた。
「本当に綺麗だな」
透き通ったエメラルドグリーンは日本の海には見られない、円堂がそう言ってその場に屈む。Tシャツが水に濡れることも気にしていないようだった。
「英語は喋れねーけど、イギリスって何だかいいな。」
夕日は海の中に落ちかけている。暗くなった空のせいで、円堂の笑顔も余り見えなくなった。それが不安になって彼に一歩近付く。
「そろそろ帰らないか」
風邪を引いてしまう、そう口にしながらまた近付くと、円堂は困った様に眉を下げた。
「帰らない」
時たま彼は駄々っ子だ。気付くと円堂は私からずっと遠くに佇んでいた。おうい、と声をかけても笑うだけだ。
「エドガー、そろそろ俺達さよならだ」
円堂は首まで海に浸かっている。太陽は逆流したかのようにきらきら頭の上で光っている。首をつるっと汗が滑るのが分かった。
「んじゃーな」
本当に軽い調子で円堂が言って、彼は頭まで海に沈み込んだ。はっとして、慌てて駆け寄ると、彼の姿はもう見えなくなっていた。
「私は、何でも捨てるから」
そう懇願しながら、彼を探すために海に潜る。あんなに透き通って見えたエメラルドグリーンは、間近で見ると濁っていた。
「嘘じゃない、円堂」
私はお前といられるなら何だってする。そう思ったのは本心だった筈だ。ただ口に出さなかっただけで、気持ちはこんなにも膨らんでいた。
「円堂」
喋る度に口から気泡が出ていく。目の前はエメラルドグリーンでいっぱいだ。私の海は、こんなにも濁っていたのか。
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よく分からない補足
海=心 濁る=気持ちが強くなる
アッ中二ですすみません
別にイギリスの海に文句をつけている訳でもありませんすみません