消えちゃいたいよ、今すぐ。吹雪の髪から滴った汗が俺の頬に落ちてくる。汗さえも冷たい吹雪の指は、もっと冷たい。はあはあと荒い俺の息もその冷たさで中和されるようだった。
「いいよ吹雪優しくしなくても」
そう呟くが、吹雪はにっこり笑うだけで俺の首筋に触れるだけのキスをした。ガンガンにきかせているクーラーもこの汗ばむ体の冷却に追いつかないでいる。吹雪の指の方が、よっぽど冷却に長けている気がした。
「いいよ。吹雪の思う通りにして、」
俺とのセックスに優しさはいらないよ、そう言うと吹雪は困った様に、ゆっくりと口角を下げた。
「これが思う通りさ」
セックスはただぐちゃぐちゃな物がいい。何もかも忘れてしまうような、そんなセックスがしたいのだ。
「嘘つき」
もしも俺が吹雪だったら今頃好き勝手してるよ。吹雪の肩に噛み付いて歯をたてると、吹雪は小さなうめき声を上げた。
「俺が吹雪のことが好きって言える意識があるようじゃ駄目だ」
吹雪の肩から出た血をぺろりと舐めとる。それでも吹雪は優しく俺の腹をつつ、と撫でている。
「全部吹っ飛ぶくらいがいい」
吹雪は俺から手を離すと、ふわりと笑った。いつも通りの優しい顔。
「まだ、だめさ」
君とはそこまで出来ない、と言われじわりと涙が浮かんだ。それを見られたくなくて腕で目を擦る。
「今は僕は君に恋情はあっても愛情はないよ。」
それから吹雪は、俺の手の平にキスを落とした。また触れるだけ。
「でも、これからきっと生まれるさ」
次に吹雪は俺の鎖骨に、吸い付くようなキスをした。浮かぶキスマークを見て更に涙が出てくる。
「それまでこれで我慢してね」
嘘つき。