目の前にドアが3つある。くすんだ茶色のドアは何か重々しく、開けるのに躊躇われた。暫くその場に立っていたが何も起こらず、このままではどうしようもないと、一番近くのドアを開けた。
「やあ風介」
中には父さんがいた。近くには瞳子姉さんもいて、二人でにこにこ笑っている。幸せな空間だと思えた。
「風介、ゆっくりしていきなさい」
父さんがそう言ったのでその場に座った。四畳半ほどの狭い部屋で、三人が落ち着いた呼吸を繰り返している。部屋に窓はなく、少しだけ殺風景だった。しばらくして、私はそこを出なければならないように思った。父さんは私を見て、またおいで、と笑った。
次の扉を開けると、体育館ほどあるような広さの部屋に、ヒロトや晴矢がいた。ヒロトがにっこり笑う。
「少し遊ぼうよ」
そうは言ったが、ヒロト達は何をするでもなく部屋に存在している。皆のことを好いていて信頼している筈なのに、その場から逃げ出したくなった。
「…行こうか」
急にヒロトが腰を上げて、ドアを開けっ放しに部屋を出ていった。私も少し躊躇ったが続いて出ていく。皆もそれに続いた。
最後の部屋の扉を開ける。終わりが見えないくらい広い部屋に、円堂が立っていた。彼は目をギュッと細めている。
「風介、好きだよ」
部屋には光が溢れていて、円堂は眩しそうに手を額にかざしている。
「私も」
そう言って円堂と部屋を出た。先ほどまで3つだった扉の数が増えている。円堂が笑った。
「楽しいな、俺ら生きてる。」

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風介さんの心の中



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