※色々捏造
ここ最近の研究によって分かったことは、世界には無数のパラレル・ワールドがあるということだ。二つの選択があったとして、その両方にそれぞれ世界がある。樹形図の様に膨れ上がっていくそれは、もう数えようもないものだ。現在自分の存在する世界以外にいる「自分」はパラレル・ワールドの住人と呼ばれているが、そのパラレル・ワールドの住人からしてみればまたこちらもパラレルな存在なのだ。
つまり、今回出会った円堂守もまたパラレルワールドの一つだ。他のパラレルワールドの円堂守は王牙学園の存在さえしらないでいる。俺を知っている円堂は、無数にあるパラレルワールドの内一人しかいない。
「バダップ・スリード!」
ヒビキ提督が声を張り上げた。はい、と返事をする。提督と会話するのは、ミッションが失敗して以来のことだ。見放されたと言ってもいいだろう。そんなことは、別に気にもならないが。
「お前はパラレル・ワールドの存在を知っているな。」
横にいたエスカバが俯いた。これから提督の口から出る言葉を察知したのだろう。ミストレの顔も心なし青ざめて見えた。
「はい」
「…今回お前が会った円堂守は、その中の一つの存在ということは分かっているな?」
「はい」
今すぐ耳を閉じたくなる。今自分に権力があって、彼を殴り倒せたとしたらどんなにいいだろう。
「我々は、その世界を閉じることに決めた。今軍を送る準備をしている。」
きっぱりと提督が言い切る。エスカバがぱっと顔を上げて、懇願するように提督を見た。
「どういう、おつもりですか」
声が少し震えたのが分かる。提督は顔色を変えずに続けた。
「あの円堂守をそのまま放置していたらお前がどうするか、自分で分かっているだろう」
ぐっと唇を噛む。提督には全て見破られていたようだ。これは牽制だ。
「バダップ・スリード。お前がこの任務から下りるというのなら、あのパラレル・ワールドは放置しておく…ただし円堂守の記憶は消すがな。」
絶望に似た言葉だった。提督の目はレンズの奥で、よく見えない。握った拳に爪が食い込んで血が出ているのに、自分でやっと気がついた。
「バダップ・スリード、どうする?」
提督が言った。ミストレとエスカバの視線が、背中に突き刺さるようだ。彼らはもう泣いているのかもしれない、不思議とそう思った。
「円堂守の、」
返事なんかすでに決まっている。それでも口に出せないのは、彼の顔をもう一度だけ見たかったからだ。80年、その時間の長さはとても言葉では表せない。
「俺達の記憶を消して下さい」
そう言った瞬間、ミストレとエスカバの視線が外れた。ヒビキ提督は一度頷くとその場を去った。涙が出るわけでもなく、ただ押し黙っている自分がいる。ミストレはその場にしゃがんでいた。
「俺がお前でも、そう言ってたよ」
エスカバがぽつりと呟いた。たった今、この限りないパラレルワールドの中から、俺達を知っている円堂守が消えた。円堂守と別れた時のように胸を一度叩く。サッカーはもうしまい、そう心に決めた。
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中二設定な上にわかりにくくてすみません\^o^/