海の中にどっぷり浸かって、そのまま一生を過ごしたい。魚になるでもなくこの姿のままで、ただ揺れる藻を眺めていたいのだ。そこには誰もいなくて、もちろん三郎次だっていない。そこで私はただゆらゆら波に合わせて動きながら目を閉じたり開けたりを繰り返す。塩水は目に痛いかもしれないけれど、私の目からも塩水が出ているからきっと大丈夫だ。太陽の光が浮かぶ昼はその明るさに彼を思って泣いて、月の光が浮かぶ夜はその暗さに彼を思って泣きたい。
「海にずっと潜ってたいな」
「死ぬぞ」
三郎次は教科書に目を落としながら淡々と言った。浪漫も何にも考えてない鈍ちん、だから嫌い。
「そうしたら三郎次とも会わなくてすむもの。」
そんな憎まれ口を叩くと、三郎次は顔を上げて馬鹿にする様に笑った。
「それなら海に潜った時、魚捕るついでにからかいに行ってやるよ。」
馬鹿郎次、そう呟くと彼はふんと鼻で笑った。だったら私はどこで泣けばいいのさ。


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