「やあ、結構いい部屋だね」
最近出来た最高級ホテルの最上階、所謂スイートルーム、気後れする俺を追いてミストレさんがずかずか中に入っていく。それから革張りのソファーに腰を下ろした。
「何してんの?早く入りなよ!」
彼が手招きをしてきて、漸く足が動いた。大理石の床に敷かれた絨毯、小ぶりだが高そうなシャンデリア、壁にかけられた美しい絵画、こんな部屋に入るのは初めてだ。ミストレさんはルームサービスの表をちらちら見ている。スイートルームにいる彼は様になっていた。
「はーあ、撮影疲れた」
「あ、お風呂いれましょうか?」
「よろしく」
ミストレさんが口を緩めて笑う。今日のグルメリポート撮影は、内容が多かったため少しハードだった。しかし淡々とこなしていく三人は流石プロという感じだった。
「一緒に入る?」
「結構です!」
からかい口調のミストレさんを突っぱねて風呂場へ向かう。その広さにまた驚きつつも、明日もある撮影の為に疲れがとれるようぬるめに湯を入れた。明日は吹雪兄弟が撮影に参加する。つまり、久々に染岡に会えるということだ。マネージャー同士積もる話もある、明日は久々に飲もうかと小さく笑みが零れた。
「ミストレさん、そろそろどうぞ」
テレビを見ている彼に声をかける。新婚みたい、ミストレさんが呟いたのは敢えて無視する。彼の着替えを準備していると、ミストレさんが俺の額に唇を落とした。このセクハラ行動にも大分慣れた様に思う。
「ありがと、守」
その笑顔を見て、なぜだか溜め息が出る。そんな俺とは対照的にミストレさんは鼻歌を歌いながら風呂場に入っていった。


「お風呂頂きました」
ミストレさんの後に風呂に入り、その広さに恐縮してしまった。本来は自分も同じ部屋というのが厚かましいのだ。濡れた髪を拭きながら溜め息をつく。風呂場から出ると、ミストレさんは既にベッドに横になっていた。目があう。彼はにんまり笑うと、片手でベッドを軽く叩いた。来い、ということだろう。
「え、いや、そんな」
「いいからおいでって。」
言ってはならない、頭の中のサイレンがビービー鳴っている。しかし断ったら後が怖い。有無を言わさない様な口調に閉口して、大人しく従ってしまう。ミストレさんは満足げだ。
「守は本当かわいいね」
ベッドに腰かけた俺の手をミストレさんが握る。細身な彼だが、意外としっかりした男らしい腕だ。
「や、えっと、明日も早いですし、疲れてらっしゃるんでしょ?もう寝ましょう」
「ここまで疲れてるんだから、どうせなら疲れきろうよ。」
ミストレさんはそう言うと俺の手を引いた。強い力で体がベッドに倒れ込む。ミストレさんの手が腹を撫で、寝巻きがわりのTシャツが一気に捲くられた。
「ぎゃあ!ちょっとミストレさん!」
情けない悲鳴を上げても、ミストレさんは気にしていない様子で横腹を撫でている。足でミストレさんを蹴るが、全く気にした様子はない。その手が胸まで移動したところで、体が勝手に大きく揺れた。
「観念して」
ミストレさんがちらりと歯を見せて笑う。涙が出てきそうだ。
「勘弁して…」
それが駄目ならせめて優しくして、ミストレさんが俺のズボンをずらした時点でもう抵抗はやめた。お母さん、僕はもう駄目みたいです。

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ベターなBL展開が好きです


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