※数年後
※いろいろパラレル

ヒロトが結婚したのはもう二年も前のことだ。相手は俺の知らない、確かおひさま園の子だった。ヒロトがずっと世話をしてきた子らしい。ヒロトは結婚式の一ヶ月前になって、漸く俺に結婚のことを言った。言わなかった理由を何だこうだと笑いながら言っていたが、内容なんて頭に入らなかった。俺らの行きつけのファミレスは人の少ない時間帯で、だからヒロトの声がしっかりと耳に入ってきた。俺はただ聞いている振りをしながらジュースを啜ることをした。頭は冷静なもので、驚きの後にすぐ「おめでとう」という言葉を口から出した。いや、捨てたと言った方がいいだろうか。感情のこもらないその祝いに対してヒロトは涙を流して喜んだ。その時俺はヒロトを宥めながら、心の中でヒロトを罵っていた。ありがとう円堂君、そう言うヒロトが実は俺の気持ちを知っているのかと疑心を持ったりした。本当は知っていたのだ、ヒロトが俺のことを好きだったことを。俺も本当は彼を好いていたけれど、認めてしまうのが怖かった。多数派でいたくて、キャプテンとして皆の前に立てるか不安で、彼の気持ちに気がつかない振りを何年も続けた。その内、彼の視線が友情を帯びたものになって、そこで初めて後悔した。思ったよりも彼を好きな自分に驚いた。
「その子のこと、好きか?」
自分のその言葉が悪あがきだったのか、ただの興味だったのか、今でも分からない。ただ口をついたのだ。ヒロトは一瞬目を見開いて、それから笑った。目は潤んで、睫毛に少し水滴がついていた。
「好きじゃなかったら結婚しないさ」
そっか、そう言うとヒロトは頷いた。それから下らない話を少しして、喫茶店を出た後に別れた。結婚式に必ず来てね、ヒロトは何度も念を押して、それから踵をかえした。どんどん小さくなっていくヒロトを見ていたら、何だか涙が出てきた。ヒロト、思わず声が出る。ぴくりとヒロトの肩が揺れた。けれど、ヒロトは振り向かなかった。どうやら泣いているようだった。ああ、全部終わったんだ。そう思うと更に涙が出てきた。鼻がじんじんして、目尻が痛くなる。頬を涙が伝って唇に染みていった。それを服の袖口で拭って、俺も家路に就いた。
「懐かしいなあ」
小さく呟いて、結婚式の写真を見る。本当に幸せそうな二人を見てまた泣きそうになった。写真を裏返しにして、机の上に置く。それから、母さんが勧めてくる見合いも受けてみようかなとため息をついた。


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恋だった基山さんと恋してる円堂さん
姉ちゃんありがとう(^o^)/


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