彼とサッカーをして感じたのは、ただただ驚きだった。自分はあんな風な顔で物事に取り組んだことはなかった。懸命にやってきた学習にもあそこまで気持ちを入れることはなかった。仲間というのも、よく分からなかった。
「ほだされたのか」
ミストレが言った。何も答えられずに黙っていると、彼はこちらをじろりと睨んできた。
「…違う」
そう言うのがやっとだった。ミストレは少女の様に端正な顔を歪めて、それから三つ編を揺らしながら踵をかえした。足は上官のいる部屋に向かっている。自分が円堂に興味を引かれてるとでも報告するのだろうか。どこか几帳面で真面目な彼のことだから、きっとそうなのだろう。言ってどうにもならないと思うが。
「…80年か」
あの時自分は確かに、80年前にいた。今探してもどこにもない場所で、80年前にあの姿で存在した円堂とサッカーをした。そして、憎むべき倒すべき相手に、80年経ってきっと今じゃあ面影もない相手に心惹かれてしまった。
「もう会えないのだろうか」
ぽつりとそんな言葉が口から出た。きっと自分はこの計画から外される。そうなったら、もうあの円堂には会えなくなるであろう。下手したら一生会えなくなるかもしれない。
「円堂守」
脳裏にあの顔が浮かんだ。口元に締まりのない、あの笑った顔。彼はサッカーを通してこちらと向き合っていた。いつかは、サッカーを通さず彼と触れ合えるのだろうか。
80年前にこの地球で笑っていた14歳の円堂守を思い浮かべて、涙が出そうになった。

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映画はまだ見てませんが小説は見ました
今映画を見たら確実にバダップに萌えすぎて死んでしまう…


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