※ヤンデレSなヒロト
※色々注意

ヒロトからの初めての暴力は二人きりの部屋でだった。合宿所の彼の部屋にいきなり連れ込まれて、頬に一発平手を打たれた。彼の細い腕からは想像も出来ないくらい強い力で、思わずその場に尻餅をついた。その時の驚きといったらとても言い表せない。だって、さっきまで一緒に食事をしていた仲間にいきなり殴られるなんて。もしかして自分は何か悪いことをしたのだろうかと思い、ヒロトに「どうした?」と聞いた。顔を上げて、思わず体が固まった。ヒロトはにっこり笑っていたのだ。いつもと変わらない少し病弱そうな優しい笑顔だった。更に驚いたのは、そのあとのヒロトの言葉だった。
「さ、練習行こう円堂君」
彼はいつもと変わらない風に話し掛けてきたのだ。自分が部屋に連れ込んで殴ってきたのにもかかわらず。少し腹が立って「どうしたんだよ!」と声を荒げると、ヒロトはきょとんとした表情になった。まるで先程のことを覚えていない様な、面食らった顔。それを見て、俺は何故だか何も言えなくなってしまった。
それからずっと、いきなり部屋に連れ込まれては暴力を受け、そしていつものヒロトに戻るということを繰り返した。いつ来るか分からない暴力というものは恐ろしい。しかも、普段は友人として接している人物からの暴力。それを気にして試合での調子は少し下がってしまった。思うようにサッカーが出来なくなるというのはストレスになる。そのことに俺はだんだん憔悴していき、そしてある日全てが爆発した。いつもの様に殴ってきたヒロトを、殴り返してやったのだ。ヒロトはぽかんと口を開けて頬を押さえていた。
「いっつもいっつも、何なんだよ!」
そう叫ぶと、ヒロトは顔を手の平で覆い隠して、ひくひく言っていた。表情がまるで見えない。泣いているのか、そう思って一歩近付いた瞬間、ヒロトがばっと顔を上げた。その顔は泣いてはいなかった。口角を不自然なくらいに歪ませて、ギュッと目を細めて、彼は、笑っていた。思わず喉からヒッと悲鳴が漏れる。ひいひい、彼はずっと笑っていた。
「うれしいな、円堂君、そんなに俺が好きだったんだね」
ヒロトが一歩一歩近付いてくる。俺は身動き出来ずにその場に突っ立っていた。ヒロトが俺の目の前に立つ。彼の右手が、俺の肩にぽんと置かれた。
「ど、どういう、」
恐ろしさに声が出なかった。ヒロトの目は決して笑っておらず、こちらを睨む様に開かれている。
「俺は円堂君を殴った。どういうって、円堂君に痛がってほしかったからだよ。痛みがあったらいやでしょう?痛いのは嫌だから、その痛さを作った人間を恨むようになる。そうしたら円堂君は頭の中にいつも俺を置いてくれるじゃないか!愛は時間が経つと薄れるけど、恨みは濃くなるんだから。ねえ、そういう意味で俺を殴ったんだろう?ねえ。」
ヒロトは俺の額にキスをした。そんなことをされても体は動かない。ただただ怖いと感じる。
「ああでも俺を殴っても意味ないよ。俺の頭の中円堂君しかいないから。なんて、恥ずかしいね。」
頬にまた痛みか走った。床に倒れこみながら、涙も出ない自分に驚いた。


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いろいろなひとにどけざしたい


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