※二年後

喜三太には順忍の才能がある、誰か先生が言っていた。その言葉を聞いて私ははっとした。こんな風にほやほや笑っている喜三太も、いつかは忍者になるということを思い知らされたからだ。
「そうだな。喜三太に限らず、皆が忍者になるなんてまだ想像出来ないよな。」
きりちゃんがそう呟く。しんべエは饅頭を咀嚼しながら、ちらりとこちらを見た。
「あと三年したら、僕らにもそんな自覚が出てくるのかなあ。」
そう言われて考えてみたが、実感が沸かなかった。この楽しい日々がずっと続くものだと思っていたから。
「私は、どうだろうなあ。」
そう言いながらしんべエの饅頭をつまんでいると、喜三太が泥だらけで部屋の前を通った。おおい、としんべエが声をかけると、喜三太は立ち止まってにっこり笑った。
「わ、おまんじゅうおいしそう。」
喜三太はこの頃実戦の成績がぐんぐん上がってきた。先輩や先生には末恐ろしいと噂されている。しかし、その時に皆に見せる笑いと私達に見せる笑いは違う。本当に安心している、そんな笑いな気がする。
「喜三太どうして泥だらけなの?」
饅頭をもぐもぐ食べている喜三太に聞くと、彼は破顔した。
「ナメさん達の餌を探してたらこんなのになっちゃった」
きりちゃんが笑って、しんべエも笑った。私は一人、少し泣きそうになりながら笑った。目の奥がじくりと痛む。喜三太は、昔と全く変わらない表情をしていた。
「変わらないね、喜三太は」
変わらないでくれ。心の中でそう叫びながら喜三太の肩を叩いた。


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