この時期、同性に惹かれるということは少なくないと聞く。しかしまあ世間一般には男子は女子を好きになるという公式が成立しているので、堂々公言する奴は滅多にいない。僕もそのパターンだ。友達とクラスの可愛い女子の話をしたり、グラビアを見たりと普通の男子中学生の様に振る舞っている。本当は、興味なんかないのに。友達に女子ということの魅力を聞くと、柔らかい、いい匂いがする、おっぱいがあると実に阿呆らしい答えが返ってくる。いや阿呆なのだろう。まあきっと本当はそんなんじゃないだろうとは思う。みんな自覚していないだけで、人間の本能、異性とセックスをしたいという欲、自分と構造の違うものに触れたいという願望を持っているのだ。もしかしたら同じ構造を愛している僕は自己愛が強いのかもしれない。固い、そんなにいい匂いもしない、おっぱいもない。確かに考えれば何故彼を愛しているのだろうと思う。
「僕好きな人がいるんだ」
円堂にそう言うと、彼は一瞬驚いた様な顔をして、それからちょっと口元を緩めた。
「どんな奴?」
「馬鹿で、元気だけはあって、人たらしで、鈍感で、固くて、そんないい匂いもしなくて、おっぱいもない奴。」
「…すごい言いようだな。」
「自分でも何で好きなのか分からないよ。」
そう呟くと、円堂は僕の目をじっと見て、それからにっこり笑った。
「そいつに何かしてもらったことがあるからじゃないか?」
好意を持つのってそういうことじゃないのか、円堂が言う。
「なるほど」
僕はすっかり納得してしまって、それからはもうごちゃごちゃと考えるのを止めた。


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