煙草を吸ったことは数える位ならある。自分から吸おうと思ったことはないが、誰かに勧められてそのまま、という感じだ。あの味は好きでも嫌いでもなかった。たまに煙草の匂いを嗅ぐと、あの背伸びしていた時代を思い出して少し恥ずかしくなる。しかし味はどうでもいいが、匂いは結構好きだったりした。
「何でだろうな、俺もそんなに煙草の匂い嫌いじゃないや。」
あの人は基本的に俺のいうことに強く反対したりすることはなかった。ただ頷いたり笑ったりして、肯定の様な行動をする。
「煙草って中毒性があるらしいから、匂いにも中毒性があるのかな。」
彼はにっと笑って、近くに捨ててあった煙草をちらりと見た。
「興味はあるけど、やっぱりまだ中学生だし、スポーツやってるから、多分一生吸わないかな」
飛鷹はまた吸う?そう言って彼は俺の目をじっと見た。透き通ったこげ茶が二つ、その中に俺が映っている。
「多分、吸いません」
そう言うと彼は安心した様に笑った。本当は彼が煙草の匂いを好いていないことは知っていた。ただ、俺と合わせる為に嘘をついた彼を見て、もう煙草は必要ないだろうと思った。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -