ゆるやかな恋だと思った。彼の額に浮かぶ玉の様な汗がとても愛おしく感じて、それからキスしたいと思った。激しいことがしたいわけではない。熱く抱き合いたいわけではない。ただ肩と肩が触れ合うだけでも自分は満足なのだ。それ以上を望まない。いや、望めない。
「お前は、俺の」
そこまで言ったが続かなかった。どんな言葉も当て嵌まらないと思ったからだ。陳腐な言葉じゃ、とても伝わらないなと思った。三橋はきょとんとした顔で、俺が次に言う言葉を待っている。
「特別だ」
漸く口から零れたのはそんな使いふるされた言葉だった。今どきドラマでも言わない様な言葉だ。三橋は目をぱちぱちして、それからにっこり笑った。一番最初には見せてくれなかった、親しみを持ってくれている顔だ。それだけでも嬉しいはずなのだ。友情ではないことを感じている自分に吐き気がしてくる。こうやって俺はまた、こいつと笑って昼飯を食って話して部活をしていくのに。
「俺も、だよ」
三橋の土に汚れたユニフォームを見て、違う、と小さく言った。三橋の耳には入らなかったようだった。


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