※吹雪二重人格設定
※色々許せる方向け

俺は吹雪士郎の亡霊だ。ちなみに俺の中の定義での亡霊は、ただ側にいるだけで害を与えない存在のこと。俺は正にそれで、あの日から気付いたら今日までずっと士郎の側に突っ立ってる。士郎がアツヤの人格を士郎の中に作ったのもずっと見ていた。それに苦しんでいるのを見ながら泣いたりした。士郎が、俺の様な顔をして俺の様に喋るのを何年も見ていた。それから、士郎の中の俺が消えるまで見届けた。心の中に広がったのは何とも言えない気持ちだった。
「円堂、か」
士郎からアツヤを引き離したのはきっと円堂、それからチームの奴らだ。決して俺が忘れられた訳ではないのに涙が出て驚いた。霊でも涙が出るものなのかと苦笑が漏れる。笑いながら円堂と話している士郎に向かって「おい」と小さく呟いた。士郎の目がちらちらとどこかを向いて、不思議そうに回った後、また円堂に向いた。

その夜俺は初めて士郎の側を離れて円堂のところへ行った。円堂は布団をぐしゃぐしゃにして、ベッドの上でいびきをかいていた。
「こんなやつに」
また涙がぼろぼろ出て悲しくなった。円堂が気持ちよさ気にううんと言って体をよじる。何だか腹が立ってきて、霊体はさぞ冷たかろうと横に寝てやった。風邪でも引けばいいと鼻を鳴らす。その時ふっと何か香りが鼻孔をかすめた。すごく懐かしい香りだ。円堂に近寄り、首の辺りに顔を埋めた。やはり不思議な香りがする。
「なんだっけ、これ」
そう言って思い浮かんだのはグラウンドだった。そして、ああこれは土の香りだと分かった。土で汚れた後に風呂に入った匂い。士郎と遊んだ日と同じ香りだ。
「そっか」
その瞬間何だか彼の全てが許せて、むしろ好意が沸いた。すうすう上下する彼の体を見て笑みが浮かぶ。
「士郎をよろしく」
今なら何となく士郎が彼に心を許した気持ちが分かった気がした。そして、もし自分も生きていたら彼と話したかったと思い、もう一度彼の香りを吸った。

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吹円+アツっぽいですね
すみませ…


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