「南雲と一緒に死にたいよ」
ぽつりと吐き出した言葉を聞いて、南雲はこちらをちらりと見た。繋いだままの手から汗がじんわり伝ってほんの少しだけ気持ち悪い。二人で立ったビルの屋上は、思いのほか風がびゅうびゅう吹き荒れていた。空からきらきらした太陽の光が降ってきてすごく眩しい。
「お前、諦めてるのか」
南雲の口調は厳しかった。彼の喉からやっとのことで絞り出されたような、苦しげな声だ。
「そんなことない。だけど、もし俺が南雲と、男と付き合ってるってことを皆に言うことが怖い」
そう呟くと、南雲はしばらく押し黙った。そして顔をくっと顔が上を向いた。
「そうだな。お前の親なんか特に、そうかもしれねーな。」
ふと想像してみた。母さん父さんは友達として紹介している「南雲」を気に入っている。だけれど、言ってしまったらどうなるだろうか。いくら理解ある人間だって、自分の子供がそうだったら。困った顔で涙を流す母ちゃんと眉を吊り上げて顔を赤くする父ちゃんは容易に想像出来た。
「でも南雲のことは好きなんだ」
我が儘だなあと笑い飛ばされるかと思えば、南雲は唇をぐっと噛んで頷いただけだった。
「下りよう」
そう言って南雲は手を離した。室内に戻りエレベーターのボタンを押す。数秒してエレベーターがつき、チインとあほらしい音が響く。乗り込んだその瞬間、南雲が口を開いた。
「本当に死にたくなったら言え。」
南雲の目の奥はぎらぎらと赤く光っていて、恐ろしくて唾を飲み込むのがやっとだった。


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