明日は帝国との試合で、俺の練習は夜7時半まで続いた。試合前日はゆっくり休むのがいいと6時には解散したのだ。だが、足は家には向かわずグラウンドへ向かった。真っ暗になってしまったグラウンドは、外灯の人工的な光にちらちらと照らされる。日の沈んだ空は青のグラデーションに染まっていた。
「切り上げるか」
一人言の後に風が吹いた。ざわざわと周りの木が揺れて、雰囲気が重くなった気がした。心の中がずしんと重い。帝国との試合を楽しみにしていた筈なのに。ふと頭に鬼道の顔が浮かんだ。実際会ったことはないが、一度サッカー雑誌の特集で見たことがある。指示を出しながらグラウンドを走っている写真と、チームメイトと話している写真があった。その時は一緒に雑誌を見ていた半田や染岡と「風格がある」と笑っていたが、今も実は同じ気持ちだったりする。彼と自分は同い年で、同じキャプテンで、それなのにこんなにも違うものかと思った。彼の堂々した姿や落ち着いた雰囲気はとても自分にはない。胸がぐっとまた苦しくなった。レンズの下に見えた彼の切れ長の目が忘れられない。彼の様に目をきゅっと細めてみたが、当たり前に何も変わらず、ただ溜め息をつく。
「明日、かあ…」
サッカーボールをカゴに入れ、鞄を肩にかける。もやもやしたこの感じも明日になればきっとすっきりするだろうなと思った。

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無自覚片思いな円堂さん



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