城から巻物を奪取するという卒業試験の際負傷した先輩は、それでも何とか巻物を持ち帰って合格したらしい。だらだら垂れ流しに血が出ていたわりには酷くない怪我を見て、食満先輩が「悪運のいい奴だ」と苦笑いしていた。しかし、緑の装束が殆ど赤褐色に染まったまま「治療して」と言って倒れた先輩を見て、数馬先輩は相当驚いたようだ。今左近先輩が何とか心のケアに努めている。代わりに私と伏木蔵が先輩の看病をしていて、伏木蔵は薬草を摘みにいった。私と善法寺先輩の二人だけが医務室にいる。
「乱太郎怒ってる?」
「はいすごく」
「…ごめん」
「普段人に怪我するな気をつけろと言っておきながら、人の治療を率先して行いながら、どうして自分のことになるとそうなるんですか!」
「すみません!」
「許しません!」
そう言って善法寺先輩に布団を被せてもう一眠りするように言うと、先輩は大人しくそれに従った。数分して規則正しい寝息が聞こえるようになり、小さく息をつく。それから、ああ先輩は合格してしまったのだなあと思った。留年してもらうことを望んでいた訳ではないが、何となくすっとしない。先輩の色素の薄い髪の毛が枕に沿って流れているのを見て、これも見納めかと感じる。
「どうか死なないで下さいね。」
ぽんぽんと布団の上から肩を叩く。私の中の少ない幸運を彼にやろうと戯れをした。悪運の強い彼のことだ、きっと大丈夫だろうとは思う。
「さみしいですから」
生きていればきっとどこかで会えるのだ。彼の包帯の巻かれた腕を見て、少しでも自分に構うようになればいいのにとも思った。


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