マニュアル通りに進むものなど、どうやら俺にはないらしい。勉強だってさくさく理解など出来る訳がなくいつもテストは母ちゃんに見せることが出来ない。サッカーだって何度も特訓して何度も失敗して今がある。色んな奴と試合をして、いいことも悪いこともあった。俺と出会わなかった方が幸せだったという奴もいるだろう。電子危機はいいなあと思った。分厚いマニュアル本がついてくるからだ。あんな細かな文字なんて読む気もしないが、それでもいざという時の安心感がある。要するにあれは読むかどうかではなくて、あるかどうかの心の持ちようみたいなものなのだ。あればそれを信頼して多くのことを恐れずにできる。そんな風に出来たらなあと何度も思った。
「わ、すごいな」
源田が俺の手を見ていった。長いとは言えない指には、ごつごつとしたまめが何個もある。またところどころ切れて傷が出来ていた。
「冬になると乾燥するから、一層傷がひどくなるんだよ」
かさかさの手をじっと見られるのが恥ずかしくて、グローブをはめた。源田は自分の指を触ったり眺めたりした後に、俺をじいっと見た。
「円堂はすごいな」
源田が笑う。源田の手も俺と同じくらいまめが出来ていた。
「源田だって」
彼の指を握って、温かさにどきっとした。まめの辺りが固く膨らんでいる。
「円堂の手は小さいな」
源田が俺の手をゆっくり包んだ。心臓に血がどんどん送りこまれる感じがする。
「そうか」
源田がすごくかっこ良く笑って、俺の頬が熱くなった。ここでセオリー通りにいったらこのまま告白という雰囲気だろう。恋愛マンガじゃそうなる。だがこれは現実で、しかも俺達は男同士だからそんなことにはならない。
「大きい手が羨ましいよ」
何時までも握っているのもおかしいので、源田の指から手を離した。名残惜しく感じてしまう自分が少し嫌になる。だがこういうことは、マニュアル通りにならないから面白いのかもしれない。


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