「キャプテンは目の中に星を飼っているんだね」
白い息を吐きながら吹雪が言った。厚手の白いコートは彼によく似合っている。
「何言ってるんだ」
ポエムの一節の様なことをぽつりと言う吹雪には正直な話もう慣れた。そりゃあ一番最初は驚いたけど、ふざけた風な感じは全くないのでとりあえず様子見をしている。
「そりゃあそのままの意味さ」
すっかり暗くなってしまった空には、ほんの少しだけオレンジ色の光が見える。それも後数分もしたら沈んでしまうくらいのものだったけれど、それでも綺麗だなあと思えた。
「俺、国語の成績2だぜ」
そう言うと吹雪は歯を見せずにくっと笑って、それから赤くてぴりぴりしていそうな頬に指をあてた。
「今日は寒いね」
外灯がちかちか点滅していて、それに照らされる吹雪は見えたり見えにくくなったりしている。
「ああ」
今日は、手袋に包まれた手でさえも冷たいのだ。早く家に帰って風呂にでも入りたいのに、何故か自分達は遠回りして帰っている。
「寒い日はよく星が見えるんだ」
吹雪が立ち止まり、俺をじいっと見据えた。吹雪が止まったので俺も止まる。風が吹いて、冷たさが頬を擦っていった。
「ほら」
吹雪が顔を近づけて言った。吹雪のつるつるした目玉には、俺がはっきりと映っている。
「キャプテンが映ってるでしょ」
にいっと子供の様に微笑む吹雪は新鮮に思える。細くなった目には既に俺の姿は映されていない。
「それでキャプテン、空を見てみて」
吹雪が俺の背中をぽんと叩いたので、俺はそれに素直に従った。既に太陽が見えなくなった暗い空には星が二つ三つ瞬いている。
「ほら」
吹雪が声を上げて笑った。ぎゅっと俺の手が握られる。
「キャプテンの目、星がいる」
変な奴だなあとぼんやり思った。俺には見えないっていうのに、そんな浪漫チックなことばかり言って。
「お前の目にもだよ」
さらに回り道へと歩を進める。吹雪はただ微笑みながらついてくるだけだった。


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