昨晩がっぷりと噛んでしまった鼻の頭に絆創膏を貼って、不動はむっすり機嫌の悪い顔をしていた。
「怒ってる?」
「当たり前だろ」
不動はその不機嫌な顔のままサッカーボールを蹴り転がしていた。昨晩噛んでしまった原因なんて、忘れてしまった。
「一層男前になったぞ」
「黙れよ」
不動の半袖からちらりと見えた腕、そこにも絆創膏がのぞいていた。きっと俺が爪で引っ掻いてしまったものだ。不動が痛いとも何とも言わないから、平気だと思いがちだ。だが俺達はもうそういう行為をしたわけではない。ただ夜中に二人で横に寝転んで、何も言わずに足を絡める。その間俺は不動をじっと見ていて、不動は俺をちらりと見たり目を閉じたりせわしない。しばらくして俺が不動の首に手を回して額を彼の胸に押し付け、鎖骨を歯でなぞってたまに噛む。不動は俺の髪をぐちゃぐちゃ撫でて、そのまますうっと眠ってしまう。それに腹が立って、昨日みたいに鼻を噛んでしまうことがある。しかし不動は一瞬怒った様な顔をして、また寝てしまうのだ。
「な、ごめんって」
「うるせーよ」
不動は眉をひそめながらこちらを見た。嬉しいとか悲しいとか困っただとか恥ずかしいだとか、色々な感情の混ざった目だ。不動は分かりやすい。だから俺は不動が好きだ。気持ちが素直な不動は、俺が好きだと態度で示してくれるから。
「今日の夜も行くな」
「あーそう」
不動はそうだけ言ってグラウンドに歩いて行った。今日も不動のどこかしらを噛みそうな気がして、自分の頬をぴしゃりと打った。

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無自覚Sな円堂さんと無自覚Mな不動さん


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