キスしてもいいか、南雲が小さな声で言った。南雲は意外に照れ屋で、そんなことを言ってきたのは初めてだ。俺と南雲のこれまでの付き合いは、ただ外に出掛けたり二人でゲームをしたりサッカー観戦をしたりと、どちらかと言えば友人関係の延長線だ。恋人らしいことと言えば、一度手を繋いだことくらいだろうか。
「えっ」
だから思わず素っ頓狂な声が出た。その声を聞いて、南雲の顔がかああっと赤くなる。俺の顔も熱くなった。
「だから、していいか」
南雲は今度はぶっきらぼうに言った。背中を汗がゆっくり伝っていって、口の中が渇き始める。いきなりどくどく鳴りはじめた心臓の音を今すぐ誰かに止めて欲しくなった。
「ああ」
そう言うのがやっとだった。暖房が熱すぎる位の部屋で、南雲と俺の距離が一気に縮まる。南雲の真っ直ぐな睫毛だとか光に当たって薄い赤になる髪の毛だとかを意識して、余計に恥ずかしくなった。
「い、いくぞ」
南雲が切れ長の目をぎゅっと閉じて、俺の唇にキスした。南雲の唇はかさついていて、少し温かい。南雲がぱちりと目を開けて視線がかちあった。唇がぱっと離れる。
「ば、目ぐらい閉じろよ!」
南雲が顔をもっともっと赤くしながらそう叫んだ。口にのったままの微熱が、俺の体をほてらせていく。
「ごめん」
上ずってしまった声でそう言うと、南雲は俯いて、片手で顔を覆った。髪の隙間からちらりと見えた耳は真っ赤だった。
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ラブラブ南円にたぎります