つい最近知ったことだが、どうやら僕は本当に好きな人を前にすると緊張して余り喋れなくなる。他の女の子だったら普通に会話も出来る。しろと言われたら口説くことだって出来る。しかしキャプテンの前になると駄目なのだ、頭の中が真っ白になって、顔に熱が集中する。その差といったら新宿のホストクラブNo.1と田舎の純朴な少女のようなものだ。多少、言い過ぎだろうか。
「吹雪ー!!」
キャプテンの可愛らしい声が聞こえる。それだけでもう頬に熱が浮かんだ。振り返ると、ツインテールを揺らして走ってくるキャプテンが見えた。
「ど、どうしたのキャプテン?」
ああ、どもってしまった、格好悪い。更に集中した頬の熱を隠すためにマフラーを引き上げ、キャプテンと目を合わせる。キャプテンはいつもこちらを真っすぐ見てくるから凄く恥ずかしい。
「あのさ、次の練習なんだけど」
キャプテンが僕に顔を寄せる。今頃僕の顔は、茹でだこみたいになってるんじゃないだろうか。正直キャプテンの話が耳に入らない位緊張している。
と、腕の方に柔らかさを感じた。腕に目をやると、キャプテンの、その、胸が当たっている。頬がこれ以上ない位熱を持ち、思わず叫びそうになった。キャプテンは話すことに集中しているのか全く気付く様子がない。いつ僕の顔から煙が出てもおかしくない中、キャプテンは平然と話をしている。周りからみたら少しシュールな光景かもしれない。しかし僕はもうどうしていいか分からない位心臓が活発に運動している状態だ。深呼吸をしてみる。少しだけ落ち着いた。
「ってことでよろしくな!」
キャプテンがそう言って顔を上げる。鼻先がぶつかりそうな位の近さに思わずのけ反った。
「あ、う、うん」
またもどもった自分が情けない。走っていくキャプテンを見て、小さく溜め息をついた。




「リカァ…」
一之瀬と会話しているリカに抱き着く。リカは少し驚いた顔をしていた。
「円堂、どうやった?」
興味津々で聞いてくるリカに小さく首を振ると、リカは不思議そうに首を何度も捻った。
「吹雪、どんだけ奥手やねん」
「なんの話?」
一之瀬が尋ねてくる。リカはにんまりと笑った。
「円堂がな、吹雪が好きやからアピールしたいって言ってたから色仕掛け教えてあげたんや」
しかし、結果は散々なものだった。
「結局吹雪引いてたっぽいし…もう駄目だ」
俺の言葉を聞いた一之瀬がクスクスと笑った。
「今更必要ないと思うけど」
それって結局どう足掻いても駄目ってことか、そう肩を落とすと一之瀬はまた笑って首を振るだけだった。



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