※別のクラス設定

円堂と昼食を共にするようになったのは二ヶ月ほど前、僕がサッカー部に入った頃からだ。それまでは互いに知り合いではなかったし、当然仲がいいわけでもなかったから、それぞれのクラスで別の友人と食事をしていた。僕が彼にサッカー部入部のことを伝えようとしたある昼休みから僕らは屋上で食事を共にし始めた。僕が円堂に「サッカー部のことを聞きたいから一緒に食べない?」と誘ってから、ずっとなあなあで続いている。二ヶ月前には涼しく快適だった屋上も、今では寒いとしか言いようがない。
「さっ、むー」
鼻を真っ赤にした円堂が隣で呟いた。存外寒がりな彼は、首に赤いマフラーを巻いている。コンクリートの床の冷たさが僕の足からじんわりと広がっていった。思わず背中と肩がぶるりと震える。
「そうだね」
二人でそんなことを喋りつつ、決して教室に帰ろうとは言わない。一言口にしてしまえばこの寒さからも解放されるのに何故、だなんて野暮だなあと思ったりした。
「そんな冷たいのよく飲めるなあ」
弁当を広げ始めた円堂が、僕の飲んでいる牛乳を見た。学校の自販機にホットなんて売っているはずもなく当然冷たいものだ。円堂がにっかりと笑ったので僕も笑った。
「あ、半田」
外を見ていた円堂がふいに呟いた。視線の先には、校庭でサッカーをしている半田がいる。円堂はちらりとこちらを見た後、また視線を戻した。敢えて視線に気がつかないふりをする。
「いいよ、食べ終わったらサッカーしにいこうよ」
とぼけてそう言うと、円堂は一瞬戸惑った目をして、それからきゅっと口角を上げた。本当は、円堂が僕を好きなことなんてとっくのとうに知っている。それから、僕と半田の関係を怪しんでいることも。それでも何も言わないのは、僕のキャラじゃないからだ。素直に好意を伝えるとか、そんな青臭いことしたくないから。
「サッカー楽しみだね」
隣に立つ円堂は、ちょっとだけ、ほんのちょびっとだけ僕より背が高い。僕が牛乳を飲む理由がそれだということに、円堂は気がついているのだろうか。僕が後、3センチ、いや5センチ身長が伸びたら、その時は。
からん
投げ捨てた空の紙パックが、風に吹かれてそんな音を立てた。恋に関しては自分不器用ですから、なーんちゃって。


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某方に捧げる松円
こんなんになっちまったよ\^o^/



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