I love youの訳し方。そのことについて教師は自分の意見を交えつつ熱く語っていた。もう三十路も超えて奥さんもいるというのに、随分ロマンチストだなあと感じる。夏目漱石は「月が綺麗ですね」と訳した。皆だったらどうする、と教師がクラスのお調子者を当てた。彼は冗談っぽい口調で「チューしたい」と言い皆の笑いを誘っていた。けれども自分はそれを間違いだと思えず、皆に同化したからからした笑いを喉から無理矢理絞りだした。見ると教師も笑っていて、自分の気持ちが何となくしらけていく。loveなんて要するに性欲だと、そう思う自分とあの教師は合わないだろうなとしみじみ感じた。

円堂さんに手紙を書いたのはその日の夜だった。世界大会が終わって一ヶ月もたったから、彼も漸く落ち着いて生活出来ている頃だろう。白い紙の上に、お世辞にも綺麗とは言えない字をのせていく。挨拶と、最近身の回りであったことと、円堂さんに会いたいということ、色々な話題を盛り込む。どれもこれも、彼に好いてもらう為、もとより彼と性行為がしたい自分の本能の表れなのだろう。そんな自分を少し情けなく思いつつも、それは当たり前と正当化する自分もいる。どうしようもなく溜め息が出て、ペンを投げた。それから自分が追っている彼の背中を思い出して、これはある意味での自慰なのかもしれないなとぼんやり思った。



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