※ちょっと病んでる円堂さん

「飛び降りてくれるか?」

円堂ほど我が儘な人間はいないと思う。いや、それはきっとしょうがないことなのだ。きっと彼は昔からムードメーカーで、それからリーダーシップがあったのだろう。皆が円堂の言うことに従って、一人っ子だから親も甘やかす。それで円堂は「自分の言うことは通る」と思い込んでしまった。まあそれはきっと不可抗力だ。円堂は、明るくて堂々とした我が儘さを持ってしまった。だから皆も何も言わない。そんな奴だ、そんな奴だ。
「一緒に飛び降りないか」
こちらに選択肢がない様な言い方に思えた。円堂は俺の目を見ながらはっきりとそう言った。目に迷いはないし、サッカーをしている時となんら変わりはない。
「は?」
短くそう反すと、円堂は手摺りを握りながら外を見回した。この廃ビルの屋上に、なぜ円堂が俺を連れて来たかは知らない。
「心中しようぜ」
円堂が笑った。この状況で笑えるこいつが、俺は少しだけ怖い。
「なんでこんなところに連れて来た?」
吐き捨てるように問う。円堂はにこにこしながら首を傾げた。
「ん?死ぬなら景色がいいほうがいいだろ。ほら、ここから見る夕焼けすげーきれいなんだ」
円堂が指す方向には、沈みかけの太陽とオレンジ色の空が広がっていた。なんてことはないありふれた風景だ。それでも円堂にはきっときれいに見えるのだ。
「絶対に死にたくないね」
そう言って円堂の背中を蹴ってやった。円堂は怒りもせずただ笑って「だから不動って好きだよ」と言いきった。なあ、いい加減お前黙れ。




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