「きっと迎えにいくからね」
ぼんやりした意識の中、その言葉だけがやけにはっきり聞こえた。その言葉がどこから聞こえるのか何て分からない。うとうととした温かい眠気に包まれながら、その声がやけに心に迫ってくる。聞き覚えのある声だった。
「だから、待っていて」
ふわりと意識が浮いて、その声は途絶えた。後はただただ静かな空間が広がる。そこで漸く先程の声の主が分かった。
「…吹雪?」
返事は当然なかった。

目が覚めると、まだ太陽が昇っていない時間だった。両親も起きていないらしく、家の中は静かだ。ふと携帯を見るとチカチカ光っていた。手に取り開けると、吹雪からメールが届いていて、どきりとした。メールボックスを開いて内容を確認する。そこにはただ「元気?」と書かれているだけだった。なんだそりゃと肩を落とす。しばらくぶりの連絡だと思ったら、こんなのだなんて。ふうと溜め息をついたところで、いきなり電話が鳴った。驚いて小さな悲鳴が出たが、吹雪と画面に出たのを見て、平静を装って電話口に出た。
「もしもし」
「ああもしもしキャプテン元気?」
早朝だというのに吹雪の声はやけに弾んでいた。欠伸をしながら、元気元気と適当に返事をする。
「どうしたんだよいきなり」
そう言うと、吹雪はくすくすと笑って、ええと、と話した。
「夢にキャプテンが出てきて「迎えにきてくれ」っていうから、なんか気になっちゃった。」
吹雪はまだくすくすと笑っていた。気持ち悪いぞー、そう返してやると、吹雪はけらけら笑い出した。
「キャプテン、声震えてるよ」
耳まで赤くなった自分を近くにあった鏡で見て、これが電話で本当によかったと思った。



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