恋というものは恐ろしいものだ。人の性格を変えることだってたやすい。しかし、愛というものは酷く穏やかだ。愛を唄い愛を嘆き愛について寡黙になる。恋はべらべらと「好きだ」と言える気がする。これはまああくまで自論だから世間一般的にはどうなのか分からない。ただ俺はそうだというだけだ。恋と愛には明確な区切りがあって、それは人によって違うと考えている。守はどうなのだろうか。守は俺に愛を感じているのだろうか、それとも恋、はたまた何も感じていないかもしれない。
「守、オレンジジュースでいい?」
そう言うと、守はうんと頷いて笑った。イタリアの住宅に来るのは初めてだ、と笑う守はとても穏やかだ。目の中にはきらきらと潤んだ様な焦げ茶が浮かんでいて、とても綺麗だ。
「はい、どうぞ」
今日の為に買った少し高めのオレンジジュースを出すと、彼は一口飲んで、すっぱいと微笑んだ。
「よかった」
そう呟きながら、自分は守に愛を感じていた。もしもまだこれが恋だったら、きっと俺はこんなオレンジジュースを出さない。きっとただのオレンジジュースを出していた。俺が思うに、恋とはただ抱きたいだけの衝動だ。愛はきっと違う。守の笑顔にただ愛しさを感じる、それが愛だろう。
「ありがとうフィディオ」
彼が愛しいと思うのは、彼も俺を愛しいと思ってくれているからではないだろうか。そう思いながらオレンジジュースを飲み干した。



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